補聴器の選び方(メーカー編)

初めての補聴器選びは、未知の世界かつ高価な買い物となるだけに特に慎重に選びたいものです。ズバリ、”失敗しない補聴器”を選択するには複数の面から検討する必要性があります。

●補聴器選択の各例:メーカー、販売店、補聴器調整技術、価格、機能、扱いやすさ、使用目的等。

今回からお届けする「初めての補聴器選び方ネット講座」では、初めての補聴器選びで注意すべき点について具体的に解説してゆきます。

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先ずは、補聴器メーカーについての解説と、メーカー選ぶ際のヒントについてお話しします。

Q:日本で流通する補聴器メーカーはいったい何社位あるの?

先ずは、主だったメーカー名と国名を表記します。※順不同

  1. フォナック(スイス)
  2. シーメンス補聴器・シバントス(ドイツ)
  3. GNリサウンド(デンマーク)
  4. ワイデックス(デンマーク)
  5. オーティコン(デンマーク)
  6. バーナフォン(スイス)
  7. スターキー(アメリカ)
  8. リオネット(日本)
  9. パナソニック補聴器(日本)
  10. コルチトーン(日本)

潜在的に必要とされるユーザー数(※1200万人~2000万人といった調べ在り。)からみるとまだまだ小さな市場の補聴器業界ですが、上記の通り日本で流通している補聴器メーカーは10社以上もあります。これだけのメーカーがあることすらご存じなかった方も多いのではないでしょうか?

※通信販売等で販売されるイヤメイトで有名なオムロン社は、補聴器メーカーには含めておりません。当サイトでは補聴器購入後の微調整も可能である製品を本来の意味での『補聴器』としてとらえているため

※2015年の補聴器出荷台数は56.2万台

それでは、どの点に注目して補聴器メーカーを選べばよいのでしょうか?

Q:メーカーの選択基準はどこをみれば良いですか?

補聴器メーカー選びの基準について解説します。

  1. 世界的なシェアでみる
  2. 自身が補聴器を必要とするシチュエーションをイメージし、補聴器の機能面でみる
  3. もちろん価格面も考慮する
  4. 実際に聴いてみる(試聴・貸し出し)
  5. 扱いやすさに考慮しているか?を考える

補聴器の新製品開発には。数十億~数百億がかかると言われていrます。※補聴器の心臓部分であるICチップの開発が主な費用。最近は2年に1度、新製品が登場するサイクルが主流となっています。その為、定期的に良い製品を作り出すためには、補聴器を使用している人の絶対数が多いメーカーの開発力が自然と進みます。(メーカーは要した費用を回収すべく販売戦略を打ってくるため。売れているメーカーは次の戦略が打ちやすい。)

前述の通り、補聴器の心臓部分=ICチップの開発コストがかなりかかってくることもあり、最近ではメーカー間のOEM(相手先ブランドによる)販売も多くなっています。※自社で製品開発できる補聴器メーカーは4社、5社とも言われています。

つまり、世界的な補聴器シェアが高いほど製品開発力があるといっても過言ではありません。※補聴器のICチップが性能の大半を決定づけます。

一方で、性能が良い補聴器=扱いやすい補聴器とは限らないといった一面もあります。

一般的に補聴器メーカーは新製品を開発する際、性能面についての研究を重視しがちです。その為、高齢者にとってやりづらさが残る電池交換については従来のままの形式といったことも多いのです。(補聴器の現場では、人によっては電池交換だけ家族にお願いする場合もあります)

補聴器メーカーの中には汗による故障を防ぐため、補聴器の性能面よりも防水面に注力した製品や電池交換のしやすさ=電池のプラスマイナスを考えなくてよいなど使用者目線で製品開発を行っているところもあります。

その他では、価格面から補聴器メーカーを考える事も重要です。

両耳装用を推奨するメーカーでは、「2個目が半額」といった価格面でサポートしてくれる施策をとってくれる製品もありますので。

補聴器メーカーを選ぶ項目の最後となりますが、メーカーを比べるうえで、試聴・貸し出しは必須であると考えます。

補聴器を使用しての目的は同じでも、メーカー間によってその目的達成のアプローチ方法が異なるからです。

声を強調しすぎると「キンキンする」と感じる方もあります。生活音を抑制しすぎると「静かすぎて聞こえにくい」となることもあります。

次に、実際に補聴器を調整する側、補聴器販売店についての解説を行います。

補聴器の選び方(販売店編)

補聴器を取り扱っているお店にはどういった種類の店があるのでしょうか?

補聴器販売店の種別

最近では補聴器販売のルートを細かく分析しますと、7種補聴器販売ルートが存在しています。

  1. 補聴器専門店(独立系)
  2. 補聴器専門店(メーカー直営店・メーカー代理店)
  3. 補聴器外来時の相談・紹介・販売店
  4. 兼業店(メガネ店)
  5. 兼業店(異業種)
  6. 通信販売
  7. ネット集客による出張訪問専門店

補聴器の専門店にも複数の種別が存在します。

当方のように、補聴器メーカー勤務後、独立開業を行い複数の補聴器メーカーを取り扱っている補聴器専門店もあれば、補聴器メーカーが直接出資を行い自店での販売については、ほぼ1社だけを取り扱う補聴器専門店もあります。また、地域の耳鼻科と連携して補聴器外来のお手伝いに入り、その後の補聴器販売を任される地元補聴器専門店などもあります。

近年ではメガネ部門の単価下落のあおりを受けて補聴器に注力しているメガネ店も多く見受けられます。また福祉用具や医療器具を主に扱っている販売店や町の電気屋さん(電機メーカーアンテナショップ)の補聴器販売参入も多く存在しています。

当方が開業当初に専ら行っていた、インターネットによる集客⇒その後の自宅や介護施設(高齢者施設含む)への「補聴器自宅出張訪問サービス」の組み合わせを行っている販売店も全国的に目立ってきております。

一方、「補聴器」「●●%オフ」といった文字だけを一人歩きさせ、自社の方針としてアフターフォローを行わない通信販売による補聴器販売店についても今後ますます増えるのでは?といった懸念もあります。

補聴器を選ぶ際、補聴器販売店を一つの指標とする場合、「補聴器がうまくいかなかった場合にどれだけ臨機応変に対応できるか?」が重要だと考えます。

例、メーカーAの製品でどうしても自分には合わないとなった場合、次の提案たとえば、製品Bならばどうか?もしくはメーカーごと変更してみてはどうか?などの柔軟な対応力

頑な持論のみを展開する補聴器販売店もありますが、その持論には客観性も必要であると当方は考えます。

数ある補聴器販売店の中から、”自身に合った補聴器販売店” の選び方についてお話ししてゆきます。

状況お伺いちゅう

補聴器選びに必須。~補聴器販売店の見極め方法~

  1. 最新の補聴器情報を持っている補聴器販売店か?
  2. その販売店の概観とプロフィールに着目する
  3. 店が流行っているか?
  4. ホームページは常に更新されているか?
  5. 補聴器の調整過程、選択過程をすべてオープンにしているか?

一昔前ですと、補聴器を販売する側と購入する側の「情報格差」は非常に大きかった、と言わざるをえません。極端な例ですが、補聴器購入の際に「お客様には●●がイイと思います」「はい、そうですか?」といった風な。

ですが、インターネットの普及と同時に補聴器の世界でも情報拡散が遅ればせながら徐々に進んできております。

他の業界では当たり前のことですが、補聴器販売店の間でも「ユーザーフレンドリーな情報発信」と「補聴器サービスの充実」が今まで以上に求めれてきます。

お客様の利便性向上のために継続的な努力を行ってゆかなければ他の業界と同じく、自然淘汰される流れになっているのです。

新しい時代の補聴器販売は、お客様にも補聴器の購入過程(なぜその補聴器に決まったのか?)や調整過程(なぜ、完全に音を矯正しないで弱めているのか?)調整の結果はどうなったのか?(現時点では補聴器のどの部分に注力しているのか?どれだけ効果が出ているのか?)をご本人はもちろん、第3者にも明確に掲示できる調整・販売過程を踏襲してゆく必要性があります。持っている情報を出来るだけオープンにして、お客様と共に調整を進めてゆく必要性があるのです。※具体的にはパソコンによる調整過程をサブモニターで掲示する、補聴器購入過程を文書化するなどです。

補聴器を扱う理由と補聴器を通じてどういった社会的貢献を行ってゆくのか?そのお店のホームページや代表者のプロフィールなどを見てゆくと自然と伝わる部分はあると考えます。(補聴器販売の前に最も重要なことではないか?と当方は考えます。)

加えて、補聴器販売店はどれだけ補聴器業界歴が長くとも、補聴器情報や新しい補聴器調整事例など新しい情報への興味関心が尽きることなく、継続的な情報更新が求められてゆきます。

次は、補聴器の技術、認定補聴器技能者についても解説してゆきます。

補聴器の選び方(認定補聴器技能者・補聴器の調整技術編)

「メガネだとどれくらい効果があるのか?すぐにわかるけれど、補聴器の場合は効果を目で見たり直ぐに感じる事が出来ないのでは?」と仰るお客様がありました。

結論から申し上げると、

補聴器の世界でも「補聴器の効果」を直ぐに体験していただくことが可能です。

具体的には「補聴器効果測定」とよばれる方法です。大きく分けて3通りの効果測定方法があります。

※3つ目は当方が独自に特に力を入れている点

  • 補聴器がある場合とない場合で、「どれだけ小さな音が聞こえやすくなったか?」を確認するテスト
  • 普通の会話音の強さで、ユーザー様自身が持つ最高の聞き取り力が発揮できているか?を確認するテスト
  • 小さな会話音の聞き取りテストを実施し、普通の会話音との聞き間違いの差をできるだけ減らすこと

通常、これらのテストを個別に実施すると少なくとも45分以上を要します。

※補聴器専属スタッフをかかえる専門店ならまだしも、兼業店の最大の弱点はこの『時間的制約』にあると言わざるを得ません。

※参考まで・・・当方が業界でも異例の『完全予約制』にこだわる理由はこの点を重視しているためです。

認定補聴器技能者と呼ばれる補聴器業界の独自資格の保持者は、上記の効果測定の必要性と技術的裏付けの知識を十分に学習しています。

※この資格は業界歴5年以上が必須で、資格取得の必須項目として地元の耳鼻科との連携が求められています。耳型採取、補聴器選定のための聴力測定など補聴器販売、調整に最低限必要な知識レベル、技術レベルは備えています。

ところが、実際の現場では残念なことに、時間的制約、機材面での制約なども多く補聴器調整・販売の現場で実施していない販売店がまだまだ多くみられます。

お客様自身が補聴器販売店を訪問した際に、今回の内容を少しでも思い出して効果測定実施の有無をも含めた販売店チェックを行っていただきたいと考えます。

生活音に耐えられるかのテストをスピーカー越しに確認
生活音に耐えられるかのテストをスピーカー越しに確認

まとめ~初めての補聴器選び方ネット講座その1~

再度、今回のテーマの要点をまとめておきます。

  • 初めての補聴器を選ぶ際には複数の面から考える必要性がある。(第1弾は、補聴器メーカー、補聴器販売店、補聴器技術(=認定補聴器技能者)
  • 補聴器メーカーは10社以上あり。自身の目的に合った補聴器を選択するため試聴・貸し出しが必須。高性能補聴器=扱いやすいとは限らない
  • 補聴器にもメガネ同様の効果測定法は存在する。認定補聴器技能者資格があっても、現場で効果測定しない販売店ならば、何らかの制約のあるお店
  • 補聴器の情報格差も徐々に減っている。補聴器も他の業界同様、ユーザーフレンドリーな最新情報の更新とサービス向上につとめないといけない。

今回は、初めての試みとして長文による【大阪市内の補聴器専門店・認定補聴器技能者が解説】初めての補聴器選び方ネット講座その1と題してお届けしました。

初めての補聴器購入(補聴器選び)の流れ解説動画