今回は、「補聴器を自分のものに出来る人、出来ない人の違いとは?」についてお届けします。

<当店に寄せられる補聴器相談内容の一例>

「本人が補聴器を使用したがらない」

「簡単に使用できる補聴器はないか?」

「親が一人で暮らしている。電話の際に聞こえてなくて困る」など

上記のご相談内容について、それぞれ順番に見てゆきましょう。

「本人が補聴器を使用したがらない」

上記の相談内容についてですが、当方にご相談いただいた場合、お客様の現状の解説と補聴器を使用した場合、使用しなかった場合のメリット・デメリットにつきまして90分程度おかけしてご説明しております。

ご家族様から「中村さんからも本人に着けるように言ってください」とのお声を頂くこともございますが、その通りご案内したとしても、大抵はうまくいきません。

結局のところご本人様が着けてみようと思われない限り補聴器は単なる高価な機械に過ぎないからです。

  • これまで聞こえなかった周囲の音
  • 電池の交換、着け外しなどの手先の問題
  • 耳の中に異物をいれることによる違和感、圧迫感
  • 自分の声の変化

こうした当面の変化に対する対応力・許容量がない段階においては、周囲が補聴器を強くおすすめしたとしてもまず使用されません。

「本当に聞こえなくなってから考える」という方もありますが、その場合、現在の聴力レベルからの低下、言葉の聞き取り力の低下、加齢による手先の問題悪化などのリスクも考えられるます。

つまり、後になってからでは今以上に補聴器の効果が出にくい状態になるということ。

 

「簡単に使用できる補聴器はないか?」

新聞広告欄には、離れた声が「はっきり聞こえる」等の文言が毎日のように踊っています。

ですが、少し立ち止まって考えてみてください。

その広告は、どんな方を対象とされているのでしょうか?

漠然と「聞こえにくいと思っている方へ」とあった場合、その聞こえにくさの原因やレベルの違いについても考える必要性があります。

”度の合っていない眼鏡”を長時間使用することほど辛いことはありませんよね。

相手の聴力や言葉の聞き取り力の程度、使用目的と使用環境、もっとも重要なことをご本人に尋ねないまま販売することは、度の合っていない補聴器を販売することもありうる、ということです。

結論から申し上げるとズバリ、

「簡単に使用できる補聴器」はないといっても過言ではありません。

”便利になって、短期間で使用慣れする補聴器は存在する”とは言えますが。

前項で述べた通り、電池の交換、補聴器の着け外し、周囲の音慣れなどある程度の時間を要することが通常だからです。(時間をかけてゆっくり低下した聴力についてはゆっくりと音慣れしてゆく必要性があります。)

 

「親が一人で暮らしている。電話の際に聞こえてなくて困る」

hearing aid on white background

親御さんと離れて暮らすご子息から、補聴器の電話相談を承ることがあります。

「本人に話してから一人で相談に行かせますから」と。

この場合も注意点が必要です。

補聴器経験者の場合であればよいのですが、補聴器が初めてで且つ手先がご不自由となった場合も残念ながら補聴器の使用がうまくいかない場合が多いです。ケアマネージャーさんが不憫に思われご相談を当方に頂くこともあります。その場合も補聴器を使用されるお客様に対して、継続してサポートできる方の存在が非常に重要です。

電話につきましても、補聴器を使用しながら電話を聞くコツがあります。その辺りのサポートをしてくださる人物の存在は必須となります。

具体的には、

自宅へ定期訪問するヘルパーさん、近所にお住いの親類、ご友人。定期的に訪問するデイサービスのスタッフの皆さん。介護施設に入居されている方であれば、施設スタッフなど。※ケアマネージャーさんは補聴器の販売店をご紹介された時点で本来の業務に移られますので、補聴器の継続的なサポートは難しいと言わざるを得ません。※施設や自宅訪問を専門に行ってきた当方ならではの視点で言い切れます。

まとめ

早い段階(年齢的にも、聴力的にも)からご自身で補聴器を使用されている方の場合、体で覚えこまれているのでお年を召されても対応力は比較的高いといえます。一方、ご高齢になられ手先も不自由、聴力レベルがかなり進んだ状態になると補聴器が自分のものになる、にはかなりの時間と周囲のサポートが必要となります。補聴器は早め装用とご高齢の一人暮らしの方の場合には周囲のサポートが必須であること繰り返し述べさせていただきます。

今回は、「補聴器を自分のものに出来る人、出来ない人の違いとは?」についてお話ししました。