今回の話題を動画でも解説しています。(1分30秒の動画です)
時間がない方のために今回のテーマにつてのまとめをPDFでもご用意しました。
補聴器の現状と価格問題
高価な補聴器は、多くの人にとって中々手の届きにくい機器であり、価格が聴覚補助の大きな障壁になっていることは否めません。
補聴器の市場価格
補聴器の平均価格は片耳15万円、両耳30万円に達し、購入には大きな投資が必要となっています。さらに自立支援法適用による公的補助の条件も厳しく、多くの人に負担が重く感じられます。
自分に合った補聴器に出会う難しさ
専門的な測定や適合調整が必要なため、本当に効果のある補聴器の購入は簡単ではありません。購入後のアフターケアも重要で、客観的な数値管理を行う専門店に出会えるか最も重要なポイントで、ハードルの高さを感じます。
AirPods自体は手頃な価格で利便性を提供しており、ごく一部の軽度難聴者にとっては有益な可能性もあります。
手頃な価格
AirPodsは一般的な補聴器に比べて低価格。見た目のコスト削減が可能です。これまで補聴器を購入できない方にも手軽に利用できる選択肢を提供しています。
音質と機能
AirPodsは、< 健聴者にとっては > クリアな音質を提供し、着信の際も快適に通話できます。また、音楽再生にも適しており、日常的に幅広く利用可能です。
シンプルな操作性
AirPodsは、簡単に接続でき、ワイヤレス機能によりケーブルの煩わしさから解放されます。使いやすさが際立ち、操作性に複雑さを感じません。
技術面での比較:補聴器 vs EarPods
音質の調整機能
補聴器はユーザーごとに異なる音質を調整できる細かな機能を持ち、環境に応じた微調整が可能です。加えて、機器とユーザーの間に第3者(補聴器販売店担当者)の客観的な目が入るため、過剰な出力が出ていないか、効果は出ているのか?を客観的に判断します。
一方、AirPodsは標準化された音質設計で、個別調整機能は備えていません。 加えてユーザー主導で音量アップを行いがちで、気が付けば過剰音量になる危険性もあります。肝心の耳栓が既製品のため、音響的には常に過不足が出がちなことも多いのが最大の注意点(耳を傷めてしまう可能性もあります)
適用可能な環境
補聴器は騒音が多い場所や会話の聞き取りが重要な場面に特化した設計です。
AirPodsは元来、音楽視聴に適しており、補聴器の代わりに使用しようとしても無理が生じます。具体的には、複雑な音環境では周囲の生活音に邪魔されて、肝心な声が聞き取れない可能性があります。静かな場面では有益なケースもあると思いますが。
AirPodsは価格と利便性で注目されるが、補聴器には及ばない限界が存在する
音質調整の限界
入力する音を48分割(イコライザー的に)して調整できる専門的な補聴器に比べ、EarPodsは高度な個別の音質調整機能を持たず、音の補正に無駄が生じます。出力面でも、中度以上の聴力障害には対応しきれません。(ピーピー音が漏れるハウリング問題も)
価格と利便性
AirPodsは手頃な価格で購入可能であり、スマートフォンとの高い互換性が特徴です。多くのユーザーが日常で使用しています。ただしこれは、< 健聴者の音楽動画視聴メインの優位性> です
長時間の装着感
長時間使用による圧迫感や耳への負担が懸念され、補聴器と比べて装着の快適さに劣る点があります。これは既製品の限界ですので仕方ない一面です。
結論と推奨事項
価格面では優位性
AirPodsは低価格で、すべての人がアクセスしやすく、経済的負担を軽減できるため、この点では多くの方に好まれます。
機能的限界
AirPodsは一部の軽度難聴者にとっては静かな場面で音質向上に役立つ可能性がありますが、補聴器のような角周波数ごとの個別調整や騒音抑制機能等のレベル比較では言わずもがな、不十分です。
推奨される対象者
<軽度の聞き取りづらさ>がある方にとって、日常生活での補聴に限定する場合、AirPodsは有効なケースもあります。イヤホンを購入する中で付加的に補聴機能が付いてくるといった考えであればお試しする価値もあると思います。よくわからない通販の集音器よりはよいのではないか?と個人的に考えます。
しかし、主に困っている場面が騒音下、環境変化の大きい方、中度以上の難聴者にとっては医療的な補聴には専門の補聴器が必要となります。
今回は、補聴器が高くて手が出ないといった方にアップル社AirPodsは有効か?についてお話ししました。
最後になりますが、補聴器は医療機器です。購入される場合、補聴器に詳しい補聴器相談医へのご相談を強くお勧めします。