Yahoo!ニュースに補聴器、聴覚関連の情報が取り上げられることはそう多くはありません。この数日、ネットサーフィンしているとこの記事
「マスクで隠さず唇を見せて」聴覚障害者の願い、ネットで拡散
を目の当たりにすることが多かったことから、本日はこの話題を基に補聴器の”得意”、”不得意”についてお届けします。テーマは、『補聴器装用(使用)スタートで、聴こえ辛さの全ての問題が解決されるわけではありません。』
補聴器が得意とすること
先ず、補聴器が得意とする点についてまとめると、
- 聞き取りが苦手な音(=音質。一般的に年齢と共に高音部が聞こえづらくなる)をその程度に応じて補てんすること。
- 定常的に発声する生活音(空調、冷蔵庫のモーター音、交差点での車の往来。一般的に雑音と称される)を抑制すること。ノイズリダクション機能と呼び、言葉か言葉以外かをパターンで選別します。
- 突然発生する強大音(扉を閉める、障子を閉める、拍手など)を耳障りでない程度に抑える(圧縮する)こと。
- 小さい音を大きくして大きすぎる音を和らげるという設定が自動的になされている。原則、音量調整不要
補聴器が不得意とすること
次に、補聴器が不得意とすること点についてまとめると、
- 早口の人を遅口にする事(営業電話に多い)
- どの人の声が重要で、どの人の声が重要でないかを判別すること(一般的に前方の声が重要。話し手の顔をみるので)
- 後方から健聴者と同じように小さな声で話しかける事(前項の通り、前に集中するモードに設定されると後ろが苦手)
- その人が持っている言葉の聞き分ける(選別する)力以上には補聴器でも聞き取れない(=限界がある)
- 瞬間的な雑音を抑える(食器がつかる音、キーボードをたたく音)こと。※最近はこれに対応する補聴器も登場
等が上げられます。
赤字で書いた項目については特に重要で、補聴器を使用していても『会話の中身がわからない』『細かい話、初めて聞く話になると聴こえ辛い』といった事も起こりうる話です。
この場合、補聴器だけに頼るのではなく、話し手は正面から、口元が見えるように、ゆっくりと話す事が重要です。
聴こえにくい状況が昔から続く方にとっては、音だけでなく、口の動き、前後の会話等で話を通じさせる習慣を身につけておられる方もあります。
高齢者を対象に事業展開する企業では、難聴者に聞こえやすいように話しかけるトーク方法なども研修を通じて習得され、その結果売り上げ上げておられるようです。
前述の通り、程度の差こそあれ、年齢と共に高音部について聴こえづらさが生じます。
Yahoo!ニュースにもあったように、病院受診時など、重要な話を聞く際にはお医者さんなど話し手にはマスクを取って説明をしてもらいたいものですが、衛生上マスクが習慣化されている背景もあり、難聴者にとっては歯がゆい状態も益々増えてくるのでは?と思われます。(こうしたニュースが拡散することで難聴者への話し方が一般化することを当方も切に願います。)
補聴器を使用されているご家族の中にも、
『本当に補聴器の効果が出ているのか?』を確認するためにわざと後ろから話しかけて試される方もあります。こうした場合には、『絶対にやめてください。正面からゆっくり話しかけていただけませんか?』と説明します。
あと、忘れがちですが補聴器を使用されている方には『決して大きな声では話しかけないでください』
補聴器で既に「聞こえやすいように」音量調整されている設定ですから、さらに大きな声を出してしまうと大変です。
大きな音を和らげる制限機能があるとはいえ、補聴器が無いときに比べ、入ってくる音が大きくなりすぎて耳も頭も驚いてしまうからです。
つまり、補聴器をされている方には普通の声で話しかけていただけるだけで十分です。
まとめ
- 補聴器にも得意、不得意があります。
- 補聴器を使用されている方に対して、『補聴器を着けているから健聴者と同じでよい』という対応は誤り
- 難聴者に分かりやすい話し方もある。
- 話し手は出来るだけ、ゆっくり、口を大きく、正面からが原則
本日は、補聴器装用(使用)スタートで、聴こえ辛さの全ての問題が解決されるわけではありません。(Yahoo!ニュース『聴覚障害者には唇見せて』より)と題してお届けしました。