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補聴器をつけても聞こえない理由|高額機種に頼る前に知っておきたいこと

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補聴器をつけても聞こえない理由|高額機種に頼る前に知っておきたいこと

「補聴器を買ったのに、思っていたのと違う」——そう感じたことはありませんか?

補聴器でうまくいかない人の共通点

補聴器ユーザーの約8割は満足しています(米国・MarkeTrak 2025調査)。

では、うまくいっている人とそうでない人の違いはどこにあるのか——それが今回のテーマです。

失敗しやすい人には共通点があります。それは、

「補聴器なら何とかしてくれる」

という期待が強すぎることです。

補聴器は非常に優れた機器ですが、万能ではありません。現在の聞こえを理解し、限界や環境を含めて考えないと、

  • 延々と補聴器探しを続ける
  • 高額な機種を渡り歩く
  • 周囲と衝突する
  • 最後は補聴器自体が嫌になる

という流れになりやすくなります。


失敗する人 その1|「自分の聞こえ」を理解していない人

結論から言うと、

言葉の聞き取り能力が大きく低下している場合、高額な補聴器でも限界があります。

特に多いのが、

「音が聞こえれば、言葉も理解できるはず」

と思ってしまうケースです。しかし実際には、

  • 音が入る
  • 言葉として理解できる

は別問題です。

補聴器は「音が小さくて聞こえない」という部分を補う機器です。ただ、長年の難聴によって耳や脳の処理能力そのものが落ちている場合、音量を上げても言葉の聞き分けには限界があります。客観的な測定では補聴効果が確認されても、ご本人の主観的な満足とかみ合わないケースが多く報告されています※1。

反響する部屋との相性は最悪

例えば、

  • 講演会・会議室
  • 飲食店
  • 健康麻雀の会場
  • 反響の強いホール

こうした場所は、もともと聞き取りが難しい環境です。さらに、言葉の聞き取り能力(語音明瞭度)が低下している方は、反響音との相性が極めて悪い傾向があります。

研究でも、難聴のある補聴器装用者は反響のある空間での言葉の聞き取りが、健聴者と比べて大きく低下することが確認されています※2。さらに補聴器には、反響音(少し遅れて返ってくる音)も一緒に増幅してしまうという構造的な弱点があります。音を大きくしようとするほど、反響音も同じように強調されてしまうのです※3。

実際によくあるケース

例えば、「反響する健康麻雀の会場で、”ポン”の掛け声が聞こえない」というケースがあります。すると、

「もっと細かい音まで聞こえるようにしてほしい」

となりやすいのですが、細かな聞き取りを改善しようとして補聴器の音量や高音域を上げていくと、今度は逆に、

  • 周囲のザワザワ
  • 牌の音
  • 椅子を引く音
  • 反響音

まで強調され、“余計に聞き取りづらくなる”ことがあります。

つまり、「小さい声を拾う」と「不要な音まで一緒に入る」という問題が起こります。特に反響する空間では、“言葉だけを綺麗に抜き出す”こと自体が難しくなります。

改善する方は「補聴器以外」も活用する

一方で、うまくいく方は「補聴器だけで何とかしよう」と考えません。

例えば、「久しぶりの友人との食事会を楽しみたい」という方がいました。飲食店は、周囲の会話・食器の音・BGMなどが重なり、非常に聞き取りが難しくなります。そこで、親しいご友人にワイヤレスマイクを持っていただき、会話相手の声を直接補聴器へ届ける形にしたところ、

  • 「久しぶりに会話についていけた」
  • 「食事会が苦痛ではなかった」

と大きく改善しました。

ワイヤレスマイクの効果は研究でも裏付けられており、補聴器単独と比べてグループ環境での言葉の聞き取り成績が大幅に向上することが示されています※4。飲食店での会話困難は補聴器ユーザーの不満として25年以上にわたり上位に挙がり続けており※5、ワイヤレスマイクはその最も有効な解決策のひとつです。

つまり重要なのは、補聴器本体だけで戦わないことです。

  • ワイヤレスマイク・テーブルマイク(※各補聴器メーカー対応のワイヤレスマイク、テーブルマイクがオプション販売されています。中でもフォナック社のロージャーは有名)
  • 座る位置の工夫
  • 周囲の協力

まで含めて考える必要があります。


失敗する人 その2|周囲の期待が大きすぎる場合

結論から言うと、

周囲が補聴器を過信しすぎると、ご本人が苦しくなります。

特に、年間を通じて会う回数が少ない家族ほど、

「補聴器を着けているのに聞こえていない」→「補聴器が悪い」

と考えがちです。しかし現実には、ご本人の聴力・手先の器用さ・操作性・忍耐力・毎日使えるかどうかなど、多くの要素が関係しています。

「後ろから話せば聞こえる」は誤解

実際にこんなケースがあります。

新しい補聴器がどれだけ聞こえているか試してみようと、後ろから小さな声で「お父さん」と呼んでみた。でも、全然気づいていなかった——と、がっかりして来店された家族がいました。

しかしこれは、補聴器の問題だけではありません。

人は基本的に、相手の口元・表情・話し始めるタイミングなど、多くの情報を使って会話しています。聞こえにくい方ほど無意識に相手の口元や表情を読む「読唇」に頼っており、補聴器ユーザーの実体験調査でもその傾向が確認されています※6。後ろから突然話しかけると、この視覚的な手がかりが完全に失われるため、聞き取りが困難になるのは当然のことです。

特に聞こえにくさがある方には、

  • 前から、目を合わせてから話す
  • ゆっくり・はっきり話す
  • 「今から話しますよ」と合図してから話す

を心がけるだけで、会話のストレスは大きく変わります。「補聴器を着けた=全部聞こえる」という思い込みを周囲が手放すことが、まず第一歩です。

「テレビが聞こえない」の本当の原因

これも非常に多い相談です。しかし結論から言うと、テレビと補聴器の最大の問題は”距離”です。

距離が離れると、掃除機・洗い物・家族の会話・エアコンなど、邪魔する音が間に入り込み、言葉の明瞭さが一気に落ちます。さらに最近の薄型テレビはスピーカーの音質が弱く、特に“言葉を支える低音”が不足しやすい傾向があります。

実際にこんなケースがあります。

補聴器なしではテレビのボリュームを60まで上げないと聞こえなかった方が、補聴器をつけることで30まで下げられるようになりました。数字だけ見れば大きな改善です。

ところが——

ボリューム30は、健聴者からするとまだまだうるさい音量です。家族から「そんなに上げなくていい」と言われ、ご本人は「補聴器をつけているのにまだ聞こえない」と感じる。このすれ違いが、テレビをめぐる家族間のトラブルの本質です。

補聴器で音量は下がった。でも、健聴者の基準には届かない。この現実を家族全員が理解しているかどうかで、日常のストレスは大きく変わります。

改善する方は「距離」を工夫する

一方で、改善する方は“音を近づける工夫”をしています。ネックスピーカーや手元スピーカーの併用、またはテレビ専用機器でBluetoothを通じて直接補聴器へ音を飛ばす方法が特に有効です。

つまり、「補聴器を変える」だけではなく、“聞く環境”を変える発想が必要になります。

実際には、補聴器を次々買い替えるより、「距離」や「聞く環境」を変えた方が改善するケースも少なくありません。


失敗する人 その3|我慢できる範囲が極端に狭い方

結論から言うと、

「声だけ聴きたい」は現実的に難しいです。

補聴器は“必要な声だけを完全に抜き出す機械”ではありません。そのため、食器の音・エアコン・紙の音・車の音・足音なども一緒に入ってきます。

「雑音ゼロ」を求め続ける

  • 「雑音は絶対イヤ」
  • 「声だけ聞きたい」
  • 「少しでも違和感があると無理」

となると、補聴器との相性は厳しくなります。さらに、短期間で聴力変動を繰り返す・来店のたびに測定を求める・毎回細かい再調整を希望するケースでは、“終わりのない調整”になりやすい傾向があります。

補聴器を途中で使わなくなる理由として「期待値が高すぎること」は繰り返し報告されており、客観的な測定では補聴効果が出ていても、ご本人の主観的な満足とかみ合わないケースも少なくありません※1。

<補足情報:ご参考までに>

最新の高性能補聴器であれば、従来よりも我慢できる程度には抑えてくれますが、それ以上を求めるとなると物理的な限界があります。

また、価格を抑えて補聴器を使用したい方は、時間を経てなれる、ケースバイケースで地震で音量音質調整を行うことが必要となります。

理想を追い続けると疲れ切ってしまう

もちろん調整は必要です。ただ、補聴器だけで全てを解決しようとすると、理想と現実のギャップに苦しくなります。結果として、

  • 調整疲れ
  • 補聴器への不信感
  • 使用中断

につながることもあります。


補聴器で本当に大切なこと

補聴器で大切なのは、「理想の聞こえ」を追い続けることではありません。むしろ、

  • 現在の聞こえを理解する
  • 限界を知る
  • 環境を工夫する
  • 周囲の協力を得る
  • 補聴器と付き合う方法を知る

ことが重要です。

補聴器は“失った聞こえを完全に元へ戻す機械”ではありません。眼鏡が視力を「矯正して元通りにする」ものであるのに対し、補聴器は「残っている聴覚機能を最大限に活かす補助機器」です。この違いを知っているだけで、補聴器との付き合い方はぐっとラクになります。

補聴器のリハビリに関する研究でも、現実的な期待値の形成・家族を含めたカウンセリング・補助機器の上手な活用が、長く使い続けるための鍵として示されています※7。

だからこそ、現実を理解したうえで、自分に合った使い方を探していくことが、結果的に一番うまくいく近道だと感じています。

だからこそ、「どの補聴器が良いか」だけでなく、現在の聞こえや生活環境を整理しながら、現実的な改善方法を一緒に考えてくれる専門店選びが重要になります。


よくあるご質問

Q. 高額な補聴器を買えば、言葉もはっきり聞こえるようになりますか?
補聴器の価格と言葉の聞き取り能力は、必ずしも比例しません。補聴器は「音の小ささ」を補う機器ですが、長年の難聴によって耳や脳の処理能力が落ちている場合、音量を上げても言葉の聞き分けには限界があります。まず現在の聴力の状態をしっかり把握することが大切です。
Q. 補聴器をつけているのに家族との会話がうまくいきません。補聴器の性能が低いのでしょうか?
補聴器だけの問題ではないケースがほとんどです。話しかける方向・距離・話し方など、周囲のコミュニケーションの取り方も大きく影響します。「前から・ゆっくり・目を合わせてから」話しかけるだけで、会話のしやすさは大きく変わります。
Q. 雑音が気になって補聴器を使い続けられません。調整を繰り返せばいつか解決しますか?
補聴器は声だけを完全に取り出す機械ではないため、生活音がある程度入ってくるのは避けられません。「雑音ゼロ」を目指して調整を繰り返すよりも、現在の聞こえの状態を理解したうえで、補聴器と上手に付き合う方法を探していく方が、長く使い続けるための近道です。

参考文献

※1 Hwang et al.「補聴器適応における主観的満足度の予測因子」PMC10817049

※2 Nissen & Holt「健聴者と補聴器装用難聴者における反響・雑音下での語音聴取」PubMed 29604671

※3 Signia「AX Auto EchoShield 技術資料」signia-pro.com(2022)

※4 Thibodeau「グループ環境でのワイヤレスマイクによる語音聴取改善効果」PMC7353922(2020)

※5 Taylor「補聴器ユーザーへのリモートマイク活用」Hearing Review(2019)

※6 Frontiers in Digital Health「補聴器の日常使用体験に関するリアルタイム調査」2023

※7 Pereira et al.「日常生活における補聴器満足度」PMC9443492

MarkeTrak 2025「補聴器の普及・満足度に関する米国消費者調査」Hearing Industries Association(2025)

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