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補聴器を何度調整しても合わない──それは「測っていない」からかもしれません

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補聴器を何度調整しても合わない──それは「測っていない」からかもしれません

補聴器を買い替えても、調整に通っても、聞こえに納得できない。

そんなご相談を受けることがあります。

ただ、私は最初から、今回の主要テーマである「実耳測定」の話はしません。

なぜなら、補聴器が合わない原因は実耳測定以前の問題であることも少なくないからです。

例えば、

  • お使いの補聴器で本当にご希望の聞こえが実現できるのか
  • 騒がしい場所での聞き取りを求めているのに、そもそも入門機を使っていないか
  • 音量調整やプログラム切替を活用できているか
  • これまでどのような調整を受けてきたのか

こうした内容を伺っていると、最初の数分で大まかな方向性が見えてくることがあります。

メーカーごとの特徴について詳しく知りたい方

補聴器は機種によって、騒音下での聞き取りや雑音抑制機能に大きな差があります。

聞こえにくさの原因が調整ではなく、補聴器そのものの性能にあるケースも少なくありません。

→ 補聴器の種類、メーカーごとの特徴について詳しく知りたい方は「補聴器メーカー比較ガイド」をご覧ください。

リンク先:メーカー比較ページ

補聴器メーカーに12年勤務し、独立後も13年以上現場に立ってきました。どこの販売店で購入されたかを伺うだけでも、その店がどのような考え方で調整しているのか、おおよその想像がつきます。

補聴器が合わない原因は一つではありません。

だからこそ私は、まず問題の所在を整理するところから始めています。

数値を見る前に、その方がどこで困り、何を求めているのかを知ること。

これは補聴器調整において、今も変わらず大切にしている考え方です。


目次

なぜ「合わない」が起き続けるのか

多くの補聴器店では、補聴器を装着した状態で聞こえを確認します。

音場測定や語音明瞭度測定を中心に行う店舗もありますし、「聞こえますか」「うるさくないですか」といったご本人の感想を参考にしながら調整を進める店舗もあります。

これらは決して間違いではありません。

私自身も独立当初は音場測定を中心に調整していました。

当時は自宅訪問も積極的に行っており、スピーカーや測定機材を持参して、その方の生活環境の中で調整を行っていました。

ところが、どうしても解決できないケースがありました。

測定上は聞こえている。

教科書通りに設定している。

それでも、

「聞き取りにくい」

「うるさい」

と言われる。

気が付けば2時間以上調整していることも珍しくありませんでした。

お客様も疲れる。

私も答えが見つからない。

ご高齢の方に何度も来店いただき、そのたびに調整を繰り返す。

「本当にこれが最善なのだろうか」

そう感じるようになりました。

補聴器は長く使うものです。

しかし、聞こえを合わせる過程まで長く苦労する必要はありません。

もっと早く、もっと客観的に現在地を把握できる方法はないのか。

それが実耳測定を本格的に学び始めたきっかけでした。


私が実耳測定を重視するようになった理由

転機になったのは、海外の補聴器適合に関する考え方を学んだことでした。

そこで知ったのが実耳測定(REM:Real Ear Measurement)です。

補聴器から出た音が、実際に耳の中でどれくらいの大きさになって鼓膜付近へ届いているのかを直接確認する方法です。

実耳測定

当時の私は、スピーカーから出した音に対して、ご本人が「聞こえた」「聞こえない」を判断し、その結果に応じて補聴器を再調整していけば、聞こえの問題は解決できると考えていました。

実際、自宅訪問にも伺い、音場測定を行いながら何度も調整を繰り返していました。

ところが現実には、測定上は聞こえているはずなのに「聞き取りにくい」「うるさい」と言われるケースがある。

その理由が当時は分かりませんでした。

耳の穴は一人ひとり形が違います。

太い方もいれば細い方もいる。

まっすぐな方もいれば曲がりが強い方もいる。

その違いだけでも、実際に耳の中へ届く音量は変わります。

現場で感じていたこうした違和感は、その後学んだ海外文献の内容とも一致していました。

パソコン画面上の予測値と、実際に耳の中の音圧は一致しないことがある。

だから実際に測る必要がある。

今では当たり前に感じることですが、当時の私にとっては大きな発見でした。

私自身、それまでの現場で感じていた違和感と研究結果が一致したことで、考え方が大きく変わりました。


個人毎に異なる耳の形状

実耳測定で分かること

実耳測定の様子

実耳測定そのものは10分程度で終わります。

まず補聴器を装着していない状態で、耳本来の共鳴特性を確認します。

このデータは将来的に処方式を変更する際にも役立つ重要な情報です。

その後、

  • 通常会話レベル(65dB程度)
  • 大きな音
  • 小さな声(50dB程度)

それぞれが適切な範囲に収まっているか確認します。

耳の穴は、

  • 太い方
  • 細い方
  • まっすぐな方
  • 曲がりが強い方

がいらっしゃいます。

それだけでも想定していた出力と大きく異なることがあります。

お客様が驚かれるのは、

「何もしなくていい」

ということです。

従来のように、

「聞こえますか?」

「もう少し大きい方がいいですか?」

というやり取りを繰り返す必要がありません。

ご家族からも、

「客観的で分かりやすいですね」

という感想をいただくことがあります。


それでも実耳測定だけでは解決しない

私は実耳測定を重視しています。

しかし、実耳測定さえやれば全て解決するとは考えていません。

以前、他店で何度も効果測定を受けていた方が来店されました。

測定結果を見ると、

「データ上は聞こえている」

ように見える状態でした。

ところが、ご本人は音量の大きさに苦痛を感じていました。

詳しく確認したところ、テストした際に、耳鳴りの影響で流れてくるテスト音に対して正確に反応できていなかったのです。

実耳測定で実際の出力を確認し、最低限必要なレベルまで音量を下げて再スタートしました。

結果として、

「前より楽になった」

と言われました。

その方の根本的な課題は、音量面ではなく、言葉を聞き分ける力の問題にありました。

その後、再調整とテーブルマイクの併用により、

「うるさくなくなったのに前より聞き取りやすい」

という結果につながりました。

測定はあくまで手段です。

大切なのは、その数値をどう読み解くかだと考えています。


メーカー勤務時代、私が信じていたこと

メーカー勤務時代、新しい製品や新しい処方式が登場するたびに、私はそれを正しいものとして受け入れていました。

当時はそれが当然でした。

メーカーの立場で考えれば、再現性が高く、クレームが少なく、多くの方に適応できる方法を提案するのは合理的だからです。

しかし独立後、他メーカーの出力特性や海外販売店の事例、NAL(オーストラリア国立音響研究所)の考え方を学ぶうちに、考え方が変わりました。

同じ聴力でも、

  • 会話音域を目標値より少し下げた方が楽な方
  • 低音を残した方が装用感の良い方
  • 目標値通りでは疲れてしまう方

は珍しくありません。

だから私は計算式を否定しません。

しかし、計算式だけに依存することもしません。

実際に耳の中の出力を確認しているからこそ、

「ここまで下げても大丈夫」

「ここは上げた方がいい」

という判断ができるのです。


正しいスタート地点に立つということ

私は実耳測定で音を大きくしたいわけではありません。

むしろ逆です。

必要以上の音は出したくない。

本当に必要な音だけを残しながら、聞き取りを最大限に高めたい。

そのために私は、

  • 実耳測定
  • 音場測定
  • 語音明瞭度測定
  • 生活環境のヒアリング

を組み合わせています。

本当にこれで良いのか。

もっと出力を下げられないのか。

もっと聞き取りは改善できないのか。

そう自問しながら日々調整しています。

海外の補聴器研究では、優れた処方式とは、その後の微調整を行うための「可能な限り最良の出発点」を与えるものだとされています。

私もその考え方には賛成です。

ただし、私が実耳測定を行う目的は、音を大きくすることではありません。

「最低限の出力で、最大限の聞き取りを」

これは私が現場で大切にしている考え方です。

以前、京都から来店されたお客様にこう言われたことがあります。

「もっとこの測定の大切さを伝えてください」

台風接近のため日程変更をお願いしたにもかかわらず、

「前から楽しみにしていました。近くにホテルも取っていますので行きます」

と来店された方でした。

高額な補聴器をお使いでしたが、

「1回の調整でここまで変わるとは思わなかった」

とも言われました。

そして最後に、

「なんで日本ではもっと広まっていないんですか」

とも。

私自身、この言葉は今でも忘れられません。

補聴器を何度替えても合わない。

調整に通い続けても納得できない。

そんな方は、一度、ご自身の耳に今どんな音が届いているのか確認してみてください。

正しいスタート地点が見つかれば、補聴器との付き合い方は大きく変わるかもしれません。


実耳測定を補聴器調整の現場で活用するには?

ここまで実耳測定が必要な理由についてお伝えしました。

一方で、実耳測定は設備を導入しただけで成果が出るものではありません。

私自身が導入当初に経験した失敗や試行錯誤については、こちらの記事で詳しく解説しています。

→ 実耳測定を導入しただけでは意味がない理由

参考文献・参考資料

本記事でお伝えした内容は、私自身の現場経験をもとに執筆しています。

一方で、経験だけに頼らないため、海外の補聴器適合研究や聴覚学の文献も継続的に学んでいます。

補聴器は医療機器でありながら、実際の聞こえ方は一人ひとり異なります。

だからこそ私は、現場で得た経験と、研究によって積み上げられてきた知見の両方を大切にしています。

以下は、本記事を執筆するうえで特に参考にしている文献・資料です。

  • Dillon, H. Hearing Aids (2nd Edition)
  • Gelfand, S.A. Essentials of Audiology (4th Edition)
  • National Acoustic Laboratories (NAL) fitting principles
  • American Academy of Audiology (AAA) Clinical Practice Guidelines
  • Mueller, H.G., Ricketts, T.A., Bentler, R.A. Modern Hearing Aids
  • Valente, M. Strategies for Selecting and Verifying Hearing Aid Fittings

※実際の補聴器適合は、文献上の推奨値だけでなく、聴力、語音明瞭度、生活環境、装用経験などを総合的に考慮して行う必要があります。

※本記事は特定の補聴器メーカーや処方式を否定するものではありません。筆者自身の現場経験と、現在までに公表されている研究知見を踏まえた考察です。

ご予約はこちらから(24時間稼働中)空き状況も確認できます。
📌初回相談・ご予約に関する大切なお知らせ

当店の初回相談は【90分・3,000円(税込)】の有料相談です。
補聴器は購入後も継続的な調整が必要なため、通いやすさをご確認のうえご予約ください。
また、可能でしたらご家族の方と一緒にご来店ください。

電話によるお問合せはこちらTEL06-4305-7904(受付平日9:00-18:00)
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