補聴器の価格の現実 2026年時点の現実
補聴器の価格は、補聴器工業会が公表している出荷金額を見ても、年々上昇傾向にあります。
現場で日々補聴器に触れている立場からお伝えすると、現在の相場感としては
両耳で30万円前後が一つの区切りになります。
ただし、この価格帯は、専門的には
エントリーモデル(入門機)
に位置づけられます。
一般の方が想像する「30万円=高級」という感覚と、
補聴器業界の実態にはズレがある、というのが正直なところです。

30万円前後で満足しやすいケース/不満が出やすいケース

満足しやすいケース
- 静かな環境(自宅中心)
- テレビ視聴・家族との会話が主
- アプリや本体付属のボタンで音量調整を自分で行える場合
この条件であれば、30万円前後の補聴器でも
「問題なく使えている」という方は実際にいらっしゃいます。
不満が出やすいケース
一方で、年齢を重ねるにつれて多くなるのが、
- 人混みでうるさい
- 会話の声だけが聞き取りにくい
という訴えです。
この場合、雑音抑制機能が重要になります。
現実的には、雑音抑制付きの補聴器になると
両耳で35万円以上、
騒がしい場所での会話を重視する場合は
50万円前後が一つの目安になります。

「10万円で何とかならないか?」と考える前に
初めて補聴器を検討される方ほど、
「自分がイメージしやすい金額」で探してしまいがちです。
たとえば
「10万円も出せば、そこそこ聞こえるのでは?」
という考え方です。
ただ、補聴器は
価格・機能・調整が密接に結びついた医療機器です。
価格を抑える場合、その分どこかを割り切る必要があります。
安く試したい場合の現実的な選択肢
「まずは補聴器がどんなものか体験したい」
という方にとって、選択肢がまったく無いわけではありません。
いわゆる簡易型や、
音量調整を自分で行う前提の機器も存在します。
ただし、これらは
- 補聴器専門店では基本的に取り扱わない
- 聴力に合わせた個別調整を行わない
という前提があります。
補聴器専門店がこれらを扱わない理由は明確で、
補聴器は医療機器であり、
使用者と機器の間に専門家が入り、適切に調整する義務があるからです。
テレビ通販製品が合いにくい理由
テレビ通販で紹介されている製品は、
音を大きくすること自体は可能です。
ただし多くの場合、
軽度難聴・右肩下がりの聴力を想定した固定設計
になっています。
そのため、
- 聴力が合わない
- 耳の形に合わない
という理由で、
合う方はごく一部に限られるのが現実です。
イヤホンという「割り切った選択肢」
最近では、iPhoneをお使いの方であれば
AirPodsなどのイヤホンに、
補聴器に近い機能が搭載されるようになっています。
仮に補聴器として合わなかった場合でも、
イヤホンとして使えるという意味では
無駄になりにくい選択肢です。
ただし、ここでも
補聴器は「調整が必要な医療機器」である
という点は切り分けて考える必要があります。
補聴器で一番差が出るのは「販売店」
補聴器選びで結果を左右するのは、
機種よりも 販売店と調整 です。
一つの目安になるのが、
- 認定補聴器技能者(個人資格)
- 認定補聴器専門店(店舗認定)
この二つです。
ただし、資格を取ったこと自体が
ゴールになっている店舗も存在します。
実際に他店から持ち込まれる補聴器を見ると、
- 聴力データを入力
- 自動フィッティング
- 音量を少し上下しただけ
というケースも珍しくありません。
この方法では、
うまくいかないことが多いのが実情です。
▶ 実例:無料相談で即購入したことを後悔→他店で有料相談を受けてみて「最初から完璧を求めすぎていた」と気づいたケース
補聴器は「調整が必要な医療機器」
補聴器は家電やイヤホンとは違い、
調整が前提の医療機器です。
- 必要な音が適切に入っているか
- 音が入りすぎて耳に負担をかけていないか
この両方を確認しながら調整します。
単に音を大きくするだけではありません。
ここからは、実際の相談現場でよくあるケースをご紹介します。
高価な補聴器でも失敗する実例
▶ 実例:両耳100万円でも聞こえなかった原因は“耳型”だった
メーカー勤務時代から現場まで、
両耳で100万円を超える補聴器でも
使えていないケースを数多く見てきました。
原因は補聴器本体ではなく、
耳に入れる部分(耳型・シェル)が短く、
音が鼓膜方向に正しく届いていなかったことです。
中度〜高度難聴の場合、
出力を上げる必要がありますが、
耳型が合っていないとハウリングが起こり、
結果として音を上げられません。
本来は、最初の1〜2か月で
確認・修正されるべきポイントです。
価格帯別の考え方(メーカー・機種例)

エントリーモデルの考え方
エントリーでは、
最新機種を追わない ことが重要です。
例としては、
- Oticon
- ReSound
のように、
一世代前のモデルをエントリーとして用意しているメーカーがあります。
それでも
両耳で20万円前後以上は見ておく必要があります。
実用ゾーン(=最も選ばれている価格帯)
実用ゾーンは、
カタログ上で 上から3〜4番目 にあたります。
具体例としては、
- ReSound Vivia(現行)
- ReSound Savvy(少し前の世代)
のように、
雑音抑制や自動音量調整が搭載され、
両耳30万円台前半〜後半で現実的な選択肢になります。
言葉の聞き取り重視のケース(メーカー例)
言葉の聞き取りが大きく低下している方の場合、
雑音を抑え、音声を強調する設計のメーカーが
合うケースがあります。
例としては、
- Signia
(旧シーメンス系)
ただし、どのグレードでも良いわけではなく、
中位以上のクラス(例:IXシリーズ以上)
が必要になるケースが多く、
価格は 両耳で48万円以上 が目安になります。
高機能ゾーンの現実的な考え方
高機能モデルでは、
両耳で70万円〜100万円を超える製品もあります。
ただし現場では、
上から2番目、または3番目のグレード
が必要十分なケースが多く見られます。
高い=良い、ではなく
使う環境と調整のしやすさ が重要です。
補聴器の価格を考えるときに、もう一つ知っておいてほしいこと
補聴器の価格を考える際、
どうしても「いくらで買えるか」という点に目が行きがちです。
ただ、もう一つ大切な視点があります。
それが 耐用年数 です。
一般的に、補聴器の耐用年数は
約5年 と言われています。
もちろん使用状況やメンテナンスによって前後しますが、
一つの目安として知っておいてよい数字です。
「高いからこそ、簡単に買い直せない」
補聴器は決して安い買い物ではありません。
だからこそ、
- 合わなかったからすぐ買い直す
- 不満があるけど我慢して使い続ける
このどちらも、現実的にはかなりつらい選択になります。
特に、
「最初だから」「続くか分からないから」
という理由で価格を抑えすぎた結果、
- うるさくて使わなくなる
- 会話が楽にならない
- 結局1〜2年で買い直す
というケースは、決して少なくありません。
5年間、毎日使うと考えてみる
ここで一度、視点を変えて考えてみてください。
仮に、
5年間、毎日ほとんど苦もなく使える補聴器 だとしたらどうでしょうか。
価格だけを見ると高く感じたとしても、
5年という時間で割って考えると、
「思っていたほど高い買い物ではなかった」
と感じる方も多いのではないかと思います。
逆に、
価格を抑えた結果、
- 使うのがしんどい
- 外す時間が増える
- 我慢しながら使う
こうした状態が続き、
短期間で買い直すことになれば、
精神的にも金銭的にも負担は大きくなります。
「今いくら出せるか」より「5年後どうありたいか」
補聴器選びでは、
- 今いくらなら出せるか
ではなく、 - 5年間、どう使いたいか
という視点がとても重要です。
毎日使うものだからこそ、
- 家の中で自然に使えるか
- 外出時にストレスが少ないか
- 無理なく使い続けられそうか
こうした点を、購入前にしっかり確認する必要があります。
最初に無理をしない、でも無理に抑えすぎない
もちろん、
無理をして予算を超える必要はありません。
ただし、
「最初だから」という理由だけで価格を抑えすぎること が、
結果的に一番つらい選択になることもあります。
だからこそ、
- 実際に貸し出しで試す
- 使えそうかどうかを冷静に判断する
- 必要なら目標を下げる
このプロセスがとても大切になります。
直営店と複数メーカー取扱店の違い
▶ 実例:直営店で合わず、比較試聴できる店へ切り替えたケース
補聴器メーカーには直営店があります。
たとえば
Phonak、Oticon、Signia、Widex、Rionet などです。
直営店では、
そのメーカーに精通した調整が受けられる反面、
扱うメーカーが限定される という特徴があります。
合えば良いのですが、
合わなかった場合、
別の店を一から探す必要が出てきます。
そのため、
- 複数メーカーを扱っているか
- 偏りなく試聴できるか
は、販売店選びの重要なポイントになります。
「最初だから安く」は、5年後につらくなることも
まとめ|機種よりも過程を重視する
補聴器選びで大切なのは、
- 価格よりも調整過程
- 機種よりも販売店
- 早く買うより、納得して選ぶこと
です。
まずは
「何ができて、何ができないのか」
を整理し、
現実的な目標を持つことが重要です。
補聴器は、
使えそうだと感じてから選ぶものです。
補聴器の基本を理解したうえで、
「では、どこで・どう選ぶか」を考えたい方は、
▶︎ 大阪で補聴器はどこで買うべきか
を参考にしてください。
ここまで、補聴器選びで実際によくある失敗や、その背景についてお話ししてきました。
ただ、実際に検討されている方からは、
「自分の場合はどうなんだろう?」
「ここがまだよく分からない」
という、もっと具体的な質問が出てくることがほとんどです。
そこで最後に、補聴器相談の現場で特によく受ける質問を、Q&A形式でまとめました。
補聴器相談の現場で特によく受ける質問Q&A
補聴器選びで大切なのは、
今の価格だけを見ることではありません。
補聴器の耐用年数は約5年。
高価なものだからこそ、簡単に買い直すことはできません。
だからこそ、
5年間、毎日無理なく使い続けられそうか。
この視点を持って選ぶことが、結果的に満足度の高い選択につながります。
価格より過程。
機種より調整。
早く買うより、納得して選ぶ。
補聴器は「使えそうだ」と感じてから選ぶものです。




