「補聴器の使用を検討しているが、高額なために躊躇している…」そんな方も多いのではないでしょうか?

母親のテレビの音量が最近特に大きくなって…耳鼻科に相談したけれど、年齢的なもので仕方ないと。補聴器も考えているけれど、なにせ高額で…

福祉器具のようにレンタルできるものは無いのかしら?

よくお問い合わせ頂く内容の一つです。一口に「レンタル」と言いましても、その言葉が意味するものは、大き分けて、2つに分かれると思います。今回は補聴器のお試し(試聴)とレンタルについて解説して参りますね。

あ、私は「間違いだらけの補聴器選び」(コスモ21社)著者で認定補聴器技能者の中村雅仁です。ドイツの補聴器メーカー、シーメンス補聴器に12年勤務後、7年前に補聴器専門店として開業しました。(※補聴器相談件数はのべ9,600件超)当方の詳しいプロフィールはこちらです。
● 補聴器のお試し(試聴)について
補聴器販売店で店内での試聴は可能。「補聴器を実際に使用する場面で試さないと…」 といった声にも対応可能。⇒有償・無償それぞれの貸出方法がある。期間は2週間から1ヶ月程度が多い。
● 補聴器の貸し出しには2種類の方法があります。
補聴器販売店側で貸出用の補聴器を準備する場合⇒貸し出し期間等融通利きやすい
補聴器メーカーから貸出用の補聴器を取り寄せる場合⇒貸し出しセットが毎回新調されるが有償
●耳穴型補聴器(オーダーメイド)貸し出し⇒原則は出来ない。ただし、 本人が前向きに補聴器をつける前提であれば、耳穴型補聴器でも融通が利きやすい。※ただし、一部入金など費用が発生する可能性もあり。
● 補聴器のレンタルは大きく分けて2種類ある!
・補聴器購入を前提とした、期間限定のお試し貸し出し制度を「レンタル」と呼ぶもの。⇒車でいう試乗
・当初から購入ではなく、お店独自のパッケージで「レンタルをサービス化」されているもの⇒補聴器業界のサブスクリプション
●補聴器のレンタルサービス(定額制)には注意点も必要
・レンタルサービスを長期間ご使用された場合、総支払金額が商品を購入した場合の最終価格と逆転する可能性がある。
・レンタルサービスに充当される補聴器は、価格整合性の面から、最新モデルではなく、1世代、2世代前のモデルになることがある。
・レンタルサービス充当機種は、他の販売店では微調整が出来ない可能性大。
・故障した場合、これまで使用していた補聴器が別の補聴器に変わる可能性も…
補聴器のお試し(試聴)について
ほとんどの方が、訪れた補聴器販売店で店内での試聴(お試し)を体験します。多くの場合、周囲が静かな環境での試聴となります。※路面のお店では、車の通過する音、テナントに入る店舗ではテナント内を歩いてみて周囲の音を体験することも。

補聴器専門店では、補聴器がある場合とない場合の差を具体的に数字で明示します。コンタクトや眼鏡の場合も着けた効果を数字で確認しますよね? ただ、この時、注意も必要です。最初から必要な音を全て届けるわけではありません。先ずは最低限、この音は聞こえていて欲しいという設定で合わせていきます。(眼鏡同様、完全には矯正せずに少し緩めに設定する。)理由は、耳と脳に音が届くことを緩やかに慣らしていくためです。


流れは分かったけれど、補聴器を実際に使用する場面で試さないと、本当の効果はわからないわよね…

おっしゃるとおりですね。補聴器販売店では、ほとんどと言って良いくらい補聴器の貸し出し(お試し)を実施しています。
お試し(貸し出し)補聴器は、2種類存在する!
補聴器の貸し出しには2種類の方法があります。
- 補聴器販売店側で貸出用の補聴器を準備する場合
- 補聴器メーカーから貸出用の補聴器を取り寄せる場合
補聴器販売店側で貸出用の補聴器を準備する場合
●メリット | ●デメリット |
貸出期間の融通が利きやすい( ※但し、販売店の方針による) | 複数メーカー扱いの店舗では、全てのラインナップを取り揃えている訳ではない |
その店舗でユーザー満足度の高い補聴器を中心に試せる ※貸し出し費用は有償・無償共に存在。 | 試したい補聴器が貸出中の場合には、待つことも |
補聴器メーカーから貸出用の補聴器を取り寄せる場合
●メリット | ●デメリット |
最新機種も含めライン ナップが豊富 | 貸出期間がおよそ2週間に固定 |
貸し出しセットを毎回新調して準備するメーカーも有り ※ただし、貸し出しは有償 | 主要な機種以外は貸出機がない場合も有り |

自宅など、先ずは静かな場所から慣らしていくのが補聴器攻略の第一歩となります。音に慣れそうにない、改善希望がある場合には、貸出期間中であっても販売店に再調整に行くことをおすすめします。

貸し出し補聴器については大体分かったわ。母は結構、頑固で「目立つ補聴器は嫌」「着けるなら、耳の中に入れる補聴器以外いイヤ」とも…

そういったお声も多いです。一般的には「耳穴型補聴器をお試しすることは出来ない」という回答になってしまいます。理由はその方の為に、新たに耳の型を起こして、オーダーメイドで製造するからです。ただし、耳掛け型の補聴器を試聴してみて、ご購入に前向きとなった場合には、補聴器を作成する場合もあります。


というと?

オーダーメイドの耳穴型補聴器は、実際のところ、試して購入されたわけではないのでどうしても合わないといった場合があります。作成した耳穴型が合わなかった場合には、耳掛け型に変更するといったケースですと販売店側もスムーズに対応してくれるのではないでしょうか?※ただし、一部入金など費用が発生する可能性もあり。

本人が前向きに補聴器をつける前提であれば、耳穴型補聴器でも融通が利きやすいということね。

後は肝心の値段よね。最初に言ったとおり補聴器の価格は高額で…

一部の販売店では「補聴器のレンタル」をパッケージにしたサービスを実施されているところもあるようですね。
補聴器のレンタルは大きく分けて2種類ある!
「補聴器のレンタル」には2種類の意味が存在します。
- 補聴器購入を前提とした、期間限定のお試し貸し出し制度を「レンタル」と呼ぶもの
- 当初から購入ではなく、お店独自のパッケージで「レンタルをサービス化」されているもの
補聴器購入を前提とした、期間限定のお試し貸し出し制度を「レンタル」と呼ぶもの
こちらについては、本編前半で説明した流れと重複するため割愛します。
当初から購入ではなく、お店独自のパッケージで「レンタルをサービス化」されているもの
ここ数年、様々な業界でサブスクリプションなるものが流行しています。補聴器のレンタルサービス」もこの一環に該当します。※毎月の支払い金額は6000円~15000円など様々。※期間中に使用する補聴器用の電池、補聴器の調整料等が含まれているようです。⇒詳しくは実施店にお問い合わせ下さい。
サブスクリプションとは、商品やサービスに代金を直接支払うのでなく、利用できる期間に支払うサービスの事で、一般的には「定額制」のサービスの事を指します。

それ、良いわね!私が考えていたのはそっちの方だわ!

最初にこの説明をしなかった理由は、注意すべき点もあるからなのです。
・レンタルサービスを長期間ご使用された場合、総支払金額が商品を購入した場合の最終価格と逆転する可能性がある。
・レンタルサービスに充当される補聴器は、価格整合性の面から、最新モデルではなく、1世代、2世代前のモデルになることがある。
・レンタルサービス充当機種は、他の販売店では微調整が出来ない可能性大。
・故障した場合、これまで使用していた補聴器が別の補聴器に変わる可能性も…

聞こえに困る多くの方々に、少しでも価格を抑えてサービスを提供される事は本当に素晴らしいことです。今回お伝えしたいのは、価格を抑えると当然ながら、犠牲にしないといけないポイントが出てきます。そちらも理解した上で、複数の選択肢を持っていただきたいという事なんです。

たしかにそうね。価格が安いことは嬉しいけれど、購入する場合との違いを知りたいわ。
補聴器レンタル(定額制)の注意点
レンタルサービスを長期間ご使用された場合、総支払金額が商品を購入した場合の最終価格と逆転する可能性がある。
補聴器のレンタルサービスには期間が制限されないものから、最低契約期間が定められているものまで複数あります。たとえ、支払いやすい金額であっても、レンタル期間が長期間に及ぶと、新たに補聴器購入した場合の金額との逆転が起きる可能性があります。
レンタルサービスに充当される補聴器は、価格整合性の面から、最新モデルではなく、1世代、2世代前のモデルになることがある。
昨今、各補聴器メーカーからは1年半、2年に1度のペースで「新製品」が登場しています。最近では、スマホとの連携機能、遠隔調整など最新補聴器には新しい機能も色々と追加されています。
ただ、新製品が登場したからといって、これまで主力として扱われてきた補聴器の性能、価値が落ちるわけでは有りません。価格面で補聴器購入に躊躇する多くの方にとって、1世代、2世代前のこうしたラインナップも、十分すぎる程の機能をもっている場合が多いのも実情です。

母は高齢だし、そんなに出歩かないし、最新モデルでなくても十分だわ。

確かにそうですね。使用される場所が自宅や静かな環境がほとんどといった場合には世代が前の補聴器でも十分に活用できます。
・レンタルサービス充当機種は、他の販売店では微調整が出来ない可能性大。
レンタルサービス用の補聴器は、他店では一切調整ができない“オリジナル商品”の場合がほとんどで、「販売店を変えて調整したい」となった場合や、引っ越しすることになった場合に近くに対応できる店が無い、などのリスクは生じます。

購入前にはそのお店の担当者と合う合わないもしっかりと見極めないと駄目ということね。引っ越し予定はないので大丈夫。
故障した場合、これまで使用していた補聴器が別の補聴器に変わる可能性も…
補聴器の場合、発売中止(=メーカーのカタログ掲載から漏れる)になってから修理部品の保持はおおよそ5年から6年。※メーカー側の企業努力でできるだけ長期に持ってくれています。
その期間を超えてしまうと、修理ができない状態になります。そうなると必然的に補聴器を変更せざるを得ない状況になります。

これは新たに補聴器を購入された場合にも該当することですので、わざわざ書く必要も無かったのですが、前述の通り、補聴器レンタルがシリーズが1世代、2世代前の補聴器であった合った場合にこうしたケースに当たる可能性が高まるので記述させて頂きました。

そうよね。一旦スタートしたらできるだけ長く使いたいと言うのは顧客心理よね。ありがとう。
● 補聴器のお試し(試聴)について
補聴器販売店で店内での試聴は可能。「補聴器を実際に使用する場面で試さないと…」 といった声にも対応可能。⇒有償・無償それぞれの貸出方法がある。期間は2週間から1ヶ月程度が多い。
● 補聴器の貸し出しには2種類の方法があります。
補聴器販売店側で貸出用の補聴器を準備する場合⇒貸し出し期間等融通利きやすい
補聴器メーカーから貸出用の補聴器を取り寄せる場合⇒貸し出しセットが毎回新調されるが有償
●耳穴型補聴器(オーダーメイド)貸し出し⇒原則は出来ない。ただし、 本人が前向きに補聴器をつける前提であれば、耳穴型補聴器でも融通が利きやすい。※ただし、一部入金など費用が発生する可能性もあり。
● 補聴器のレンタルは大きく分けて2種類ある!
・補聴器購入を前提とした、期間限定のお試し貸し出し制度を「レンタル」と呼ぶもの。⇒車でいう試乗
・当初から購入ではなく、お店独自のパッケージで「レンタルをサービス化」されているもの⇒補聴器業界のサブスクリプション
●補聴器のレンタルサービス(定額制)には注意点も必要
・レンタルサービスを長期間ご使用された場合、総支払金額が商品を購入した場合の最終価格と逆転する可能性がある。
・レンタルサービスに充当される補聴器は、価格整合性の面から、最新モデルではなく、1世代、2世代前のモデルになることがある。
・レンタルサービス充当機種は、他の販売店では微調整が出来ない可能性大。
・故障した場合、これまで使用していた補聴器が別の補聴器に変わる可能性も…

今日はどうもありがとう。知りたい内容が、おおよそ理解できました。

参考になれば幸いです。今回は補聴器レンタルがテーマでしたので、次は、補聴器購入をお考えの方向けに、補聴器の選び方についても解説しますね。よろしければ、こちらも合わせてお読み下さい