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【補聴器の価格(値段)は高い?安い?】
2017-05-23

元補聴器メーカー出身で補聴器ガイドブック「間違いだらけの補聴器選び(コスモ21社)」著者※現在は補聴器販売店オーナー。
補聴器の選び方について補聴器の価格(値段)面から書いてみます。
2016年度の補聴器平均価格は片耳11万円前後(両耳20万円)
2016年度の日本補聴器工業会発表の出荷金額(卸売価格)から市場の販売(=流通)価格におおよそ換算すると片耳11万円前後。両耳を基本として考えると、20万円前後が平均価格と言えます。
※両耳装用の場合、メーカによっては両耳価格が存在するため。
※このデータの中には、通信販売でおなじみの「イヤメイト」(オムロン社)等の簡易型補聴器は含まれていません。
補聴器の価格ですが、片耳3万円~片耳50万円近いものまで幅広く存在します。

幅がありすぎやろ?

「はい、私もそう思います。ですが、幅を持たせるには理由があります。
補聴器に対する考え方がお客様毎にことなっている事もその理由の一つ。
「音さえ大きくなればそれで良い」
「価格が安ければ安いほど良い」
「目立ちにくいものが欲しい」
「大きくても扱いやすいのが良い」
「一世代前のタイプでも安ければ良い」
「できるだけ静かに聞き取りたい」
「耳に入れるだけの”簡単な”物が良い」
「会話に集中したい」
「前後後ろ、そこからの声も聞き取りたい」
「テレビを見るときだけ使用したい」
「自分に合うならば、体の一部として毎日使用したい」
「場面ごと、場所ごとに適した音にして欲しい」
「手ぶらで電話ができると嬉しい」
「必要なときだけ使用したい」
こうした幅広いニーズに対して答えてゆくとなると、補聴器の価格も幅広くなってゆきます。
補聴器の価格(値段)について角度を変えて見てゆきます。
集音器(通販で販売されている簡易型補聴器)と対面販売の補聴器との価格差
1、購入後のアフタフォロー=調整料を予め含んだ価格
2、性能上の違い=ピーピーなるハウリング、雑音抑制機能の有無、レベル差
3、カウンセリング料の差(本人のお聞こえ、希望にあった補聴器の提案)
補聴器メーカーのカタログ上の補聴器の価格差を構成する要素
1、見た目
2、会話と会話以外の周囲の音の選別力
3、環境ごとの変化対応力
4、外部の機器(テレビ、スマホ)との連携力
補聴器販売店ごとの価格差(=割引率の違い)
1、補聴器を専業で行っているか否か?(調整にかける時間は?)
2、設備投資の費用差(効果測定実施のための検査機器)
3、技術面でのコスト差(業界歴など、時間的情報蓄積量の差)
4、補聴器情報面でのコスト差(メーカー出身者の場合一般的に情報量が多い)
「安くてお勧めの補聴器を教えてもらえませんか?」
このご質問は、当方にいただく中でも多いご質問の一つです。上記の事前説明を前提に、下記では価格を抑えた補聴器の選び方について書いてゆきます。
先ずお願いするのは、「先ず、通販で購入するのは待ってくださいね。」と
つまり、アフターフォロー(微調整ができる)補聴器を販売店専門店でお買い求めください、と。
●補聴器専門店でやってもらうべきこと
<補聴器購入前>
具体的には、お客様の現在の聴力、言葉の聞きとり力を店頭で確認してもらい、
補聴器自体で問題解決出来ること、出来ないことを先ずはスッキリさせるましょう。
<補聴器購入後>
補聴器購入後、目指すべき目標ラインをあらかじめ販売店スタッフと決めてください。補聴器の効果の有無は、新調した眼鏡と同様「効果測定」と呼ばれる補聴器の効果を数値で見るテストが必須。認定補聴器技能者在籍店でも、このテストを漏らしている販売店がまだ見受けられます。ゴール地点がないと、いつまでも販売店に通い続ける羽目に。。。
価格を抑える秘訣(=コツ)は?
◆ 「時間的経過と慣れ」を予め覚悟する。
つまり、 周囲の騒音との協調を目指すということ。
若い方の場合は、比較的、音慣れ、装用感慣れは早い場合が多いです。ただ、難聴になって10年以上経過している、騒々しい場所での使用が日課となる方については注意が必要です。
<対策として>
1,環境スイッチもしくはボリューム付きの補聴器を選ばれることおすすめします。(ご自身で音量、音質を変更することが出来ます)
2,どうしても慣れない、といった場合もあります。 事前に補聴器の貸出を受けて周囲の音が許容できるか、確認しておくことが重要です。
◆「見た目よりも聞こえ」を優先する。
見た目が良いほど補聴器コストはアップします。
耳穴型と耳かけ型との間には1割程度の価格差があります。
(オーダーメイド耳穴型は個別に作成するため手間がかかり、その分だけ割高)
ただ、最近では耳穴、耳かけ型補聴器との間に金額差がなくなってきているメーカーもあるので、確認が必要です。
◆最新モデルにこだわらない
最新モデルの補聴器になると、必然的に価格は高止まり。
最近では一世代前の補聴器がメーカーカタログに載り続けることも多くなってきました。
補聴器が初めて、といった方の場合「高機能」も重要な要素ですが先ずは「不足している音」を
「必要な分だけ耳に届ける。両耳に届ける」事が優先されるべきかと。
◆合計金額を下げる
両耳価格の設定のある補聴器メーカーの製品ですと、片耳あたりのコストダウンは可能です。(両耳価格が片耳価格の1.5倍といった設定がなされている製品もある為。)
当方が接客するときに必ず申し上げるのが、「ご予算の中で両耳購入できる補聴器が最適です。」「極端に申し上げれば、どんなに性能の高い補聴器を片耳に装着したとしても、両耳比べると太刀打ちできません。それがレベルの少し低いクラスであったとしても、です。」人間の耳は両耳でしかできないことも多くあります。
音源、位置、方向感の把握、
騒音化での聞き取り向上力、
両耳で分散する事で騒音の抑制が可能
耳への負担減などです。
※言葉の聞き取り力低下を防ぐのも両耳装用のメリット(片側に頼らない)静かな場所だけで、正面の方(一人)と話ができれば十分という方であれば、片耳でも使用できる場面はあります。ですが、片耳ではできないことがある事も知っておいてくださいね。(上記の両耳装用でできることとの比較)
※参考
補聴器を片耳で装用する場合には、悪い側ではなく、良い側につけることが多い事、知っておいてください。(言葉の聞き取りが良い側につけると、すぐに効果が表れやすい。 悪い側につけると、音は聞こえるが何をいっているのかわからない、となる場合も・・・)
●まとめ
価格を抑えた時の欠点
◆聞きたい音や会話以外の音が気になる事が多い。聞き流すトレーニングを要し、時間的経過慣れが必要。
◆見た目が大きくなり、目立ちやすい
◆調整できる項目が少なく、「これ以上は補聴器ではどうしようもなく、 慣れてもらうしかありません」となる事もあり得る。
先ずは価格を抑えて補聴器を使用したい、両耳を使用したい方へのオススメ機種
●両耳15万円~20万円前後で購入できる補聴器紹介
耳あな型補聴器
フォナック社 タオQ15
ベルトーン(NJH社)アライ
小型耳掛け型補聴器 RICモデル
シーメンス補聴器(シバントス社) オリオン(旧モデル)
オーティコン社 リア(旧モデル)、リア2
以上、「補聴器は高い?安い?先ずは価格から補聴器の選び方を考えみよう」でした。
価格を抑えて自分にあった補聴器に出会われること、願っております。
●おまけトピック「補聴器って、本当に雑音が多いの?」
主に以下の事が原因で、「補聴器をつけると雑音が多い」と感じられること多いです。
<雑音が多いと感じる2つの原因について>
時間をかけながら聞こえにくくなった場合・・・
1、本来、聞こえておくべき音を「雑音」と認識。
2、物理的に、大きい音に対する許容量がなくなる。
年齢とともに聞こえにくくなる加齢性の難聴の場合、補聴器を装用する前の段階で、
健聴者とは上記のような違いがあること、知っておく必要があります。
<補聴器が行っている雑音対策は?>
本来、聞こえておくべき音を「雑音」と認識・・・への対策 補聴器装用後、会話以外の生活音については、時間の経過とともに徐々に聞き流せるようになってきます。(必要な音かそうでないかを聞き分ける)
ただし、時間的な経過を待てない難聴者の方もおられます。「こんなうるさいものはイヤ」と。その場合には、雑音抑制といった機能を活用することになります。(=ノイズリダクション。※他メーカーごとに呼び名あり。)雑音抑制付きの補聴器は、あらかじめ分析された会話の特徴(時間的ながれ、音声成分)を自動認識できるようプログラムされています。その結果、会話以外の音は「雑音」と認識し、自動的に抑制することが可能です。
※注意点・・・雑音抑制付きといいましても、レベル差があります。3dB程度の抑制機能ものから、最大24dBの抑制が可能なものまで。補聴器を選定する時には、主な使用場所(生活音、環境音の多少)を想定して、選ぶ必要性があります。ここでいう雑音抑制は、定常的(=瞬間的ではない)な雑音を抑えることが主体です。
例:車のエンジン音、換気扇、エアコンの音、冷蔵庫のモーター音※人の声が複数あって雑音のように聞こえる場合は、この機能では対応できません。指向性とよばれるマイクシステムの力を借りて、方向性を限定して話を取り入れる方法があります。
●物理的に、大きい音に対する許容量がなくなる・・・への対策
大きい音に対する許容量の変化の例:補聴器を装用していない状況で食器が落ちた時に、人一倍驚く。ドアが閉まる音に度々「静かに締めて!」と言うそれまで普通に見ていたテレビも、CMが始まった途端に驚く補聴器を装用していない状態でも、上記に該当する方は、特に、補聴器の選定を慎重に行う必要があります。対面で販売される「補聴器」の多くは、自動音量調整を行っています。(小さい音は大きく聞こえるように、大きい音は大きくなりすぎないように※ポケットタイプと呼ばれる箱型補聴器や、一部廉価版は除きます。)※注意・・・
自動音量と一口で言いましても、レベル差があります。低音~高音の周波数全体を大きく2箇所にわけて音量調整するものから、48箇所に細分化して音量調整するものまで。ご自身の聞き取りの状態(どの音が得意でどの音が不得意か?)、大きな音への許容量、使用する場所を総合的に選んで判断する必要性があります。最近では、瞬間的な雑音にも対応できるものが登場しています。
(ドアを締める大きな音だけでなく、キーボードを叩くカチャカチャ音まで。
サウンドスムージンググ、アンチショックなどのネーミング)