「補聴器相談員」って誰? NHK「あさイチ」の補聴器特集後、当店で増えた意外な検索ワード
番組で紹介されていたのは「補聴器相談医」。でも検索されたのは「補聴器相談員」でした。
たった一文字の違いに、補聴器を取り巻く制度のすべてが詰まっています。
2026年9月14日、NHK「あさイチ」で補聴器が特集されました。
番組の中で紹介されていた大切なポイントのひとつが、「まずは補聴器相談医に相談する」ということでした。補聴器に長年携わっている私としても、これは非常に大切なことだと思います。
ところが、その日の当店ホームページへのアクセスワードを見ていると、少し面白いことが起きていました。増えていたのが、「補聴器相談員」という検索です。
番組で紹介されていたのは補聴器相談「医」。でも検索されたのは補聴器相談「員」でした。「医」と「員」。たった一文字の違いです。
では「補聴器相談医」とは、どんな人?
補聴器を検討すると、補聴器相談医・認定補聴器技能者・認定補聴器専門店と、似たような専門用語が次々に出てきます。でも役割で考えると、それほど難しくありません。
耳・難聴を医学的に診る人。補聴器を実際に合わせる人。その仕事を行うための基準を満たした店。まずは、この3つに分けて考えてみてください。
まず耳を診る専門家「補聴器相談医」
最初に知っていただきたいのが、すべての耳鼻咽喉科医が「補聴器相談医」ではないということです。補聴器相談医は、補聴器医療について所定の研修を修了し、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会から委嘱を受けた耳鼻咽喉科専門医です。
聞こえにくくなった原因を診察し、聴力検査を行い、治療できる難聴なのか、治療が難しい難聴なのか、本当に補聴器が必要なのかを医学的に判断します。
補聴器相談医になるためには、聴覚検査と補聴器、フィッティングの実際、装用指導、補聴器適合検査、言語聴覚士・認定補聴器技能者との連携、装用開始後のフォローアップ、補聴器の種類と機能、福祉制度や購入費用の助成という8項目・6時間の講義に加え、耳型採型と補聴器特性測定の実技講習まで受けます。
一度委嘱を受けたら終わりではありません。補聴器相談医の任期は5年間。継続するには、5年間に必要な単位を取得し、更新申請を行う必要があります。
補聴器相談医の講習会講師は原則として耳鼻咽喉科専門医ですが、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の補聴器相談医運用細則では、言語聴覚士や認定補聴器技能者についても、経歴を福祉医療委員会に提出し、審査で承認されれば講師になることができると定められています。
医師だけで完結するのでもない、販売店だけで完結するのでもない。それぞれの専門性を持ち寄って支える仕組みが、すでに用意されています。
なぜ、補聴器店より先に「補聴器相談医」なのか?
理由はシンプルです。聞こえにくくなったとき、いきなり「どの補聴器を買おう?」から始めないためです。なぜ聞こえにくくなったのか、加齢などによる聴力低下なのか、治療できる病気が隠れていないか。こうした医学的な診断は、補聴器販売店ではできません。医学的な判断は、医師の領域です。
お金の面でも「先に相談」には意味があります
補聴器購入には、自治体によって助成制度が利用できる場合があります。対象年齢・所得条件・聴力条件・必要書類・助成額などは自治体によって異なり、購入前の受診や申請が必要になる制度もあります。
自治体の助成制度を利用できない場合でも、一定の条件を満たした補聴器購入費については、医療費控除の対象になる場合があります。国税庁は、補聴器相談医が「補聴器適合に関する診療情報提供書」により、補聴器が診療等のために直接必要であることを証明している場合について、一般的に支出される水準を著しく超えない範囲の購入費を医療費控除の対象としています。
次に「認定補聴器技能者」
耳の状態を確認し、「補聴器を使ってみましょう」となったら、ここから補聴器選びとフィッティングです。そこで登場するのが認定補聴器技能者です。
認定補聴器技能者は、公益財団法人テクノエイド協会が認定する補聴器の専門資格です。補聴器の選択、フィッティング、補聴効果の確認、使用方法の説明、購入後の調整など、実際に補聴器をその方の聞こえに合わせていく仕事を担います。通常は複数年にわたる養成課程で学び、試験を経て資格を取得。認定後も5年ごとの更新が必要です。
役割の整理
- 補聴器相談医=耳・難聴を医学的に診る専門家
- 認定補聴器技能者=補聴器を選び、聞こえに合わせる専門家
競い合う資格ではありません。役割が違います。補聴器相談医を育てる研修の中にも、認定補聴器技能者が関わる仕組みがあるほど、医療とフィッティングの連携が補聴器では重要だということです。
「認定補聴器専門店」は人ではなく店の認定
認定補聴器技能者は「人」。認定補聴器専門店は「店」。認定補聴器専門店も、公益財団法人テクノエイド協会による認定制度です。認定補聴器技能者が勤務していることだけでなく、補聴器の調整や測定を行うための設備、販売後の対応、業務内容など、一定の基準を満たした店舗が認定されます。有効期間は5年間。継続する場合には、改めて更新審査を受けます。
認定補聴器専門店なら、どこでも同じ?
ここから先は、認定されているかどうか+実際の店の中身を見ることをおすすめします。同じ聴力だからといって、全員が同じメーカー、同じ形、同じ価格帯になるわけではありません。だから、「一番良い補聴器はどれですか?」よりも、「私には何が合いますか?」と考えることの方が大切です。
補聴器を考えたら、この順番
最後に整理します。
まず耳鼻咽喉科・補聴器相談医へ
病気の有無、難聴の状態、補聴器の必要性を医学的に確認する。
利用できる制度を確認
自治体の補聴器購入費助成や、条件を満たす場合の医療費控除などを確認する。
認定補聴器専門店へ相談
実際の補聴器選びを始める。
認定補聴器技能者とフィッティング
聴力や聞こえ方に合わせて細かな調整を行う。
比較する
できれば複数メーカー、複数タイプを実際に聞き比べる。
補聴効果を確認する
「音が大きくなった」だけではなく、必要な音が適切に届いているか確認する。
購入後も調整を続ける
補聴器は、買った日が完成ではありません。
「医」と「員」の一文字から見えてくること
今回の記事を書くきっかけになったのは、NHK「あさイチ」で紹介された「補聴器相談医」という言葉でした。そして放送後、当店のアクセスワードには「補聴器相談員」という検索が数多く現れました。たった一文字の違いです。
でも、その一文字を調べていくと、補聴器には、耳を医学的に診る人がいて、補聴器を合わせる専門家がいて、その仕事を行うための基準を満たした専門店がある。そして、それぞれが別々に存在しているのではなく、医療と補聴器の専門家が連携する仕組みまで作られていることが分かります。
補聴器選びというと、どうしても「いくらするのか」「どのメーカーがいいのか」という話から入りがちです。でも本当に最初に考えてほしいのは、何を買うかではなく、誰に相談するか。耳を診てもらい、自分に必要な補聴器を選び、きちんと合わせてもらい、使いながら調整を重ねる。この順番です。
補聴器は「商品」だけで完結するものではありません。医療・技術・継続したフィッティング。この3つがそろって初めて、その方の生活の中で役立つものになっていくのだと思います。
補聴器業界に携わる一人の人間として、昨日の「あさイチ」の放送が、そんな一歩を踏み出すきっかけになればと願っています。
大阪で補聴器を相談するなら
The補聴器専門店 中村
公益財団法人テクノエイド協会認定の認定補聴器専門店。
認定補聴器技能者がご相談を担当し、複数メーカーを比較しながら、
価格や知名度ではなく「その方に本当に合うか」を一緒に確認していきます。
参考サイト・参考資料
この記事では、主に以下の公的・専門機関の情報を参考にしています。
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
公益財団法人 テクノエイド協会
国税庁
※各制度は今後変更される場合があります。本記事は公開時点で確認できる公式情報をもとに作成しています。





