補聴器のご相談に来られる方の中には、集音器を購入したことのある方や通信販売の補聴器を購入された方がいらっしゃいます。
多くの方はそれらに満足できず、結果、こちらの店頭へ相談にいらっしゃる方がほとんどです。
初めてに方には馴染みがないことかもしれませんが、補聴器を上手に使っていくには、専門家によるフィッティングと呼ばれる調整や細かなサポートが必要です。
また、
集音器は医療機器では無いので、難聴者の聞こえを補うには適さないと言われています。
※たまに、現在お使いの集音器の「調整をして欲しい」とおっしゃる方がありますが、そもそも調整器そのものが備わっていない機種が大半です。
(⇒ 前述のフィッティングすら出来ない。)
これらは補聴器業界にいる私たちの間では常識なのですが、一般の方となると、まだご存知無い方も多いのが現状です。
今回の記事では、平成19年に国民生活センターより発表された資料を元に、長いタイトルになりましたが、
「補聴器・集音器を通信販売で買う前に予め押さえておきたい5つの問題点と3つのアドバイス」
について書いてまいります。
出典元: http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20070906_1g.pdf
買う前に予め抑えておきたい5つの問題点
安全性
●出力される最大音が業界の出荷基準である 120 dBを超える銘柄が 7 銘柄あり、安全上問題で あると考えられた。
また、最大音の平均値が軽度~中等度難聴者にとって聴覚保護上十分安全だ とされる 110 dB以下だったのは 1 銘柄のみだった。
補聴器や集音器から出せる最大の音量(最大出力)は、本人の聴力の特徴や主観(例:うるささの感覚)に合わせて、本来であれば専門家によって微調整されなければなりませんが、通信販 売ではこの作業ができません。よって、難聴であっても、大きな音によって聴覚に悪影響を与えて しまう可能性があります。
補聴効果
●会話音を増幅する能力が小さく、十分な補聴効果を得られない可能性がある銘柄が 3 銘柄あ った
●会話音の聞き取りに適さない周波数特性を持つ銘柄が 7 銘柄あった
補聴器を装用して十分な補聴効果を得るために、それぞれの難聴の程度に応じて、ふさわしい 音量を算出し調整することが必要ですが、通信販売ではこれらの調整ができません。
また、殆ど の補聴器は、人間の聴覚の特性に合わせた「周波数特性」を元に作られていますが、その特性に ふさわしくない波形を持つ商品もあったということです。これでは、難聴者の聞こえを補うことが できませんし、上記の安全性で述べたように、聴覚に悪影響を与える可能性も否定できません。
モニターテストの結果
●8 銘柄は、モニターが使用しているフィッティングを受けて購入した補聴器に比べて十分な補聴 効果が得られなかった
ここでは、対面販売でフィッティングを受けて補聴器を購入した軽度~中等度難聴のモニター8 名が、現在使用中の補聴器と、今回対象になった通信販売の補聴器・集音器を聴き比べて評価し ました。
やはり、自分の聞こえに合わせてフィッティングした補聴器の方が結果が優位でした。
電池の寿命
●連続使用した場合、24 時間程度で電池が消耗し、高額な電池代が必要となる銘柄が 2 銘柄 あった
補聴器の電池寿命は、形状にもよりますが、5日~1ヶ月程度です。通信販売で流通している器 機の中には、短時間で電池が消耗し、ランニングコストが割高なものもあるようです。
表示について
●薬事法に基づく表示に不備のある銘柄が 1 銘柄あり、問題であった
●集音器等の中に、誤認を与える可能性があるような表示がなされた銘柄があった
補聴器の業界では、消費者に誤認を与えるような、効能・効果等に関する記載を厳しく制限し ています。
しかし、集音器は補聴器では無いため、消費者に誤認を与えるような広告表現が目立 ちます。これらに影響されて購入に至るケースが多いのですが、効果についてはきちんと保証され ていません。
以上、5つの問題点を見ていきました。
補聴器専門店から3つのアドバイス
これらを受けて、以下の3つが消費者への最適なアドバイスとなります。
- フィッティングを受けて補聴器を購入するようにしよう
- 補聴器を購入する際は、業界の認定制度の下で一定の基準を満たした販売店で購入するよ う にしよう
- 難聴者は、集音器等を使用しないようにしよう補聴器は、言語聴覚士・認定補聴器技能者などの専門的な知識を持った担当者から、フィッティ ングに必要な設備や機材を有する専門店での購入が勧められています。また、集音器は難聴者向けの製品ではありません。
気楽に考えて使用した結果、却って聴覚に悪影響を及ぼす可能性があ りますので注意しましょう。
今回は、「補聴器・集音器を通信販売で買う前に予め押さえておきたい5つの問題点と3つのアドバイス」と題してお届けしました。