補聴器はどこで買う?
専門店・メガネ店・病院・通販の違いと、後悔しない購入先の選び方
補聴器業界25年・認定補聴器技能者が、相談現場から本音でお伝えします
ただ、どの形態が正解ということはありません。見てほしいのは、誰が調整を担当し、効果を確かめ、購入後も責任を持って付き合ってくれるかです。
補聴器にこれまで縁がなかった方にとって、どこで売っているのかは見当がつきにくいものです。「メガネ屋さんの店先にのぼりが出ているのは見かけるけれど……」という声もよく聞きます。補聴器の専門店があること自体、知らない方も少なくありません。
この記事では、補聴器を買える場所ごとの特徴と、それぞれで確認しておきたいことを、現場の経験からお伝えします。
補聴器を買える場所は、主に5つ
| 購入先 | 特徴 | 確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| 補聴器専門店 | 補聴器だけを扱う。測定や調整の設備がそろっていることが多い | 誰が担当するか、複数メーカーを比べられるか |
| メガネ店・家電量販店 | 身近で入りやすい。店や担当者によって力の入れ方に差がある | 調整を店の担当者が自分で行うか |
| 病院の補聴器外来 | 医師の診察と連携できる | 実際に調整するのは誰か、調整日の自由度 |
| 訪問専門の補聴器店 | 自宅や施設まで来てくれる | 測定機器を持参するか、訪問料の条件 |
| 通販・インターネット | 店に行かずに買える | 購入後の調整を誰がするのか |
ここからは、一つずつ見ていきます。
それぞれの特徴と、確認しておきたいこと
補聴器専門店
補聴器を専門に扱う店です。聴力測定や試聴、調整に必要な設備がそろっていることが多く、担当者の経験も補聴器に集中しています。
一定の基準を満たした店は「認定補聴器専門店」として認められています。また、補聴器の知識と技術を習得した人には「認定補聴器技能者」という資格があります。どちらも、初めて店を探すときの目安になるでしょう。
ただし、専門店といってもやり方はさまざまです。メーカー直営店や、特定メーカーとの結びつきが強い店では、自社製品を中心に提案するのが自然な流れになります。複数メーカーを聞き比べたい方は、「その場で2〜3社を比べられますか?」と事前に聞いてみてください。
メガネ店・家電量販店の補聴器コーナー
身近にあって、入りやすいのがメガネ店です。最近は家電量販店に補聴器コーナーがあることもあります。
誤解のないようにお伝えしておくと、メガネ店がよくないという話ではありません。認定補聴器技能者を置き、真剣に補聴器に取り組んでいるメガネ店もあります。
一方で、担当者のレベルに大きな差があるのも事実です。中でも注意したいのが、調整をメーカーの営業担当者に任せていて、店の担当者が自分では細かく対応しないケースです。
見分けるヒントになるのが、店員さんのこんな言葉です。
- 「今度、補聴器メーカーから専門家が来ますから」
- 「今度、補聴器のプロが来ますから」
- 「メーカーの担当者を招いて、補聴器相談会をしますから」
一見、頼もしく聞こえるかもしれません。でも、よく考えると少しおかしな話です。
メーカーに12年勤め、200店以上の販売店を担当してきた立場から言うと、メーカーの担当者がずっとあなたの補聴器を見続けることはできません。購入後の数年間、誰が責任を持って調整してくれるのか。そこを確かめてください。
メーカー時代は、販売店を回って補聴器の販売や調整を手伝うのも仕事のうちでした。だからこそ、言えることがあります。
メーカーの担当者は、あくまでメーカーの人間です。受け持つ店は一軒ではないし、異動や担当替えもあります。
補聴器は、一度合わせて終わりの商品ではありません。使い始めてから「家では聞こえるけれど、外では聞き取りにくい」「前より聞こえにくくなった気がする」といった相談が、必ず出てきます。
そのとき、次にメーカーの担当者が来る日まで待たされるとしたら、どうでしょう。
販売店選びで見てほしいのは、その店の担当者自身が、補聴器を選び、調整し、結果を確かめる技術を持っているかです。
病院の補聴器外来
耳鼻咽喉科の中に「補聴器外来」を設けている病院もあります。医師の診察と連携できるのは心強い点です。
ただ、実際の補聴器の選定や調整は、病院と提携する販売店やメーカーの担当者が受け持つことが少なくありません。現場で見ていると、次のような傾向もあります。
- 調整日が曜日で決まっていて、自分の都合に合わせにくい
- ほかの患者さんも多く、一人に割ける時間が限られる
- 試聴用にはベーシックな機種が貸し出されることが多い(その分、貸出期間は長めのことも)
希望するメーカーや機種がある場合は、扱いがあるかを先に確かめておくと安心です。
訪問専門の補聴器店
自宅や介護施設に来てくれる、訪問専門の補聴器店も増えています。外出が難しい方にはありがたい存在です。
良い訪問店かどうかを見極めるポイントは、ひとつです。
肉声だけでテストしたり、「聞こえていますか?」と口頭で確認するだけだったりする場合は、注意が必要です。訪問だからといって、店で本来行うことを省いてよいわけではありません。測定機器やクリーニング用の機材を持ってきてくれるかを見てください。
あわせて、購入前に次の点も確認しておきましょう。
- 訪問料は有料か、無料か。無料ならいつまでか
- スタッフは複数いるか(お客様が増えるほどアフターフォローも増えるため、一人体制だと手が回らなくなることがあります)
通販・インターネット
補聴器は医療機器ですが、通販でも買えます。店に行かなくて済む手軽さはあります。
ただ、相談の現場でよく聞くのが、こんな話です。
「本人は通販で買って楽だったと言う。でも、そばにいる家族からすると、しょっちゅうピーピー鳴って、何度も聞き返される。本当にそれで合っているの?」
補聴器は、買った瞬間がゴールではありません。使いながら少しずつ合わせていくものです。通販で買う場合は、購入後の調整を誰が、どこで、どうやってするのかを確かめてからにしてください。
また、通販でよく見かける「集音器」は補聴器とは別物で、医療機器ではありません。音を大きくする道具としては使えても、一人ひとりの聴力に合わせて調整する前提ではつくられていません。
買う前に、まず耳鼻咽喉科へ。できれば「補聴器相談医」を
どこで買うかを考える前に、ひとつだけ順番があります。まず耳鼻咽喉科で、聞こえにくさの陰に病気が隠れていないかを確認することです。
急に聞こえが悪くなった、片耳だけ聞こえにくい、耳鳴りやめまいがある。こうした場合は、治療が必要な病気の可能性もあります。補聴器を考えるより先に受診してください。
受診先は、できれば補聴器相談医がいる耳鼻咽喉科を選ぶのがおすすめです。補聴器相談医は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する、補聴器に詳しい医師のことです。
補聴器相談医を受診するメリットは、診察だけではありません。
- 医療費控除の対象になる可能性がある
補聴器相談医が「補聴器適合に関する診療情報提供書」を書き、それをもとに補聴器を購入した場合、購入費が医療費控除の対象になることがあります。この書類は購入前に必要で、買った後からでは間に合いません。 - 医師の所見を補聴器選びに生かせる
聴力の状態や注意点を販売店に伝えてもらうことで、機種選びや調整の参考になります。
医療費控除でどれだけ税金が戻るかは、所得や納税の状況によって変わります。個別の判断は、国税庁の案内や税理士・税務署でご確認ください。
障害者手帳による補装具費の支給や、自治体の補聴器助成も、購入前の申請が基本です。
大阪市の補聴器助成制度について、対象や申請の流れをまとめています。
→ 大阪市の補聴器補助金について耳鼻科で販売店を紹介されても、そこで買う義務はありません。購入先はご自身で選んで大丈夫です。
どこで買う場合でも、聞いてほしい3つの質問
店の形態がどうであれ、次の3つを聞けば、その店の姿勢はかなり見えてきます。
1「調整は、どなたがしてくださいますか?」
購入後も同じ担当者が見てくれるのか。メーカー任せになっていないか。
2「補聴器の効果は、どうやって確かめますか?」
「聞こえていますか?」と尋ねるだけで終わっていないか。測定で確認しているか。
3「困ったとき、どれくらい相談に乗ってもらえますか?」
購入後の調整の回数や費用、保証期間が過ぎた後の対応はどうなっているか。
答えに詰まったり、話をはぐらかされたりするようなら、もう一軒、話を聞いてみることをおすすめします。
同じ補聴器でも、買う場所で結果が変わる
25年この仕事をしてきて、強く感じていることがあります。
補聴器は、箱に入った商品を手渡して終わる仕事ではありません。聞こえを評価し、比べて試し、調整し、効果を確かめ、また微調整する。その積み重ねで、ようやく「使える補聴器」になります。
だからこそ、「どこで買うか」は「どの機種を買うか」と同じくらい大切です。
聴力データを入力するだけでは、足りない
今の補聴器は高性能で、聴力データを入れれば、メーカーの調整ソフトが推奨の設定を自動で計算してくれます。
ただ、それで一人ひとりに合った聞こえになるとは限りません。同じ聴力でも、耳の穴の形や大きさ、耳栓の種類によって、鼓膜に届く音は変わります。困っている場面も、人によって違います。
そこで当店では、実耳測定(REM)で、補聴器を着けたままの状態で耳の中に届いている音を確かめています。ソフトの画面に出る数値と、実際に鼓膜の近くに届いている音は、一致しないことがあるからです。
調整したあとは、言葉の聞き取りや装用効果も確認します。大事なのは音を大きくすることではなく、必要な音がきちんと届き、実際の聞き取りにつながっているかどうかです。
実耳測定で何を確かめているのか、こちらで詳しく解説しています。
→ 補聴器を何度調整しても合わない方へ高い補聴器を買えば解決、とはいかない
これまで1万件以上の相談を受けてきて、高価な補聴器を使っているのに十分聞き取れていない方を、何人も見てきました。
逆に、最上位機種でなくても、調整がきちんと合っていて、満足して使われている方もいます。
もちろん、機種によって機能や、対応できる環境の違いはあります。それでも、その人に合った調整ができていなければ、どれだけ高性能でも宝の持ち腐れです。だから、まず高い機種をすすめるのが正しいとは思っていません。
補聴器は、同じメーカーの同じ機種を買えば、誰でも同じ結果になる商品ではありません。だからこそ、店の技術と考え方を見てほしいのです。
購入先の具体的な選び方は、こちらで詳しく解説しています。
→ 大阪で補聴器を選ぶ完全ガイドよくある質問
Q.耳鼻科で紹介された店で買わないといけませんか?
A.その義務はありません。紹介先で話を聞いたうえで、ほかの店と比べてから決めても大丈夫です。
Q.メガネ店で補聴器を買っても大丈夫ですか?
A.店によります。認定補聴器技能者がいて、調整を店の担当者が自分で行っているかを確認してください。
Q.通販の補聴器でもいいですか?
A.購入後の調整をどうするかが決まっていれば、選択肢にはなります。ただ、合わないまま使い続けてしまうケースは、現場でも少なくありません。
Q.近くに補聴器専門店がない場合は?
A.メガネ店や訪問専門店でも、この記事の「3つの質問」に答えられる店であれば相談先になります。認定補聴器専門店は、日本補聴器販売店協会の加盟店検索でも探せます。
Q.補聴器を買うのに、病院の診察は必要ですか?
A.診察がなくても購入はできます。ただ、聞こえにくさの陰に病気がないかの確認は欠かせません。補聴器相談医の書類があれば医療費控除の対象になる可能性もあるため、購入前に補聴器相談医を受診することをおすすめします。
まとめ
- 補聴器は、専門店・メガネ店・病院・訪問店・通販などで買える
- どの形態が正解かではなく、誰が調整し、効果を確かめ、購入後も付き合ってくれるかで選ぶ
- 「メーカーから専門家が来ます」という店は、購入後の体制を確認する
- 買う前に耳鼻咽喉科、できれば補聴器相談医へ。医療費控除や助成の手続きは購入前に
補聴器は、買った日がゴールではありません。
使い始めてから調整を重ね、暮らしの中で聞こえを確かめ、必要に応じて直していく。その繰り返しです。故障や修理、数年後の買い替えまで含めると、長い付き合いになります。
メーカー時代も含めて、この仕事を25年以上続けてきました。補聴器選びでいちばん大切なのは、メーカーの名前でも、値段でも、店の大きさでもない。そう考えています。
結局は、そこに尽きると思います。どこで買おうか迷っている方は、ぜひ購入後のことまで考えて、納得できる相談先を見つけてください。
大阪・天王寺の当店でも、初回相談(90分・5,000円)を受け付けています。
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