オーティコン Opn 2からOwn SI 2へ買い替え|CIC・IICの実例と実耳測定による調整
耳あな型補聴器の買い替えでは、新しい機種の性能だけでなく、必要な出力、耳型の設計、実耳測定(REM)による調整が結果を左右します。
今回は、オーティコンのOpn 2(オープン2)からOwn SI 2(オウン エスアイ 2)へ買い替えられた2名の実例をご紹介します。
一方はCICで必要な利得を確保するための音響設計、もう一方はIICで小さな声の聞き取りを改善するための精密な調整。同じメーカーの買い替えでも、取り組む課題は大きく異なりました。
1.症例① Opn 2 CICからOwn SI 2 CICへ|出力と装用感の両立
試聴した瞬間、表情が変わった
中耳炎を含む伝音性難聴があり、中高音域は高度難聴に相当する方です。必要な出力とハウリングへの余裕を考えれば、本来は耳掛け型を推奨したい聴力でした。
しかし、長年使用されてきたのはOpn 2 CIC。今回も同じ形状を希望されました。近い将来には耳掛け型も購入し、場面によって使い分ける予定があるため、今回は最上位ではなくOwn SI 2を選ぶ方針にしました。
買い替え前には、お持ちの2社の補聴器を比較試聴していただきました。オーティコンを試された瞬間、ご本人の表情が一変。その反応が印象的で、オーティコンを選ぶことになりました。
90スピーカー、2つのプログラム、3D耳型設計
Own SI 2 CICでは90スピーカーを採用しました。旧Opn CICのスピーカー仕様は75・85、新しいOwn SI CICは75・90です[1][2]。
ただし、スピーカーの数字や最大利得だけで、実際の聞こえを比較することはできません。
海外の研究でも、カプラー上で似た利得特性を持つ耳あな型補聴器の間で、実耳利得に差が生じることが報告されています[3]。
今回は必要な利得を確保しながら、ハウリングを抑えることが大きな課題でした。仕事中の小声への対応も考え、2つのプログラムを設定しています。
| プログラム | 設定内容 |
|---|---|
| 普段用 | 日常生活やリラックスしたい場面 |
| 仕事用 | 小入力の利得を普段用より3〜4dB高く設定 |
ボタンによる両耳連動のプログラム切替えを活用し、場面に応じて使い分けられるようにしました。
耳型採取には、耳の状態を考慮し、印象材を耳道に入れない方法として3Dスキャナー「オトスキャン」を使用。取得した耳型データは当店でも保管し、将来のシェル再製作や買い替えに活用できるようにしています。
また、耳道部分を長めに設計して密閉性を高め、ハウリングを抑えながら必要な利得を確保することを狙いました。
音響フィードバックに関する海外研究でも、耳道内の密閉性や音漏れが使用可能な利得に影響することが示されています[4]。
オーティコンの耳掛け型については、Opn・Opn Sの修理終了とIntent 3・4への買い替え事例も紹介しています。耳掛け型でも、以前と同じグレードにこだわらず、生活環境に合わせて機種を選んだ実例です。
測定目標は達成。装用感を考慮してシェルを再製作
初回製作ではハウリングが発生せず、装用閾値と語音明瞭度も当店の目標を達成しました。今回の聴力とCICという制約を考えると、良好な結果でした。
ただ、長時間使用すると耳が痛むとのお申し出があり、シェルを再製作。装用感は改善しました。耳に手をかざした際、まれにハウリングが生じることがあるため、引き続き状態を確認しています。
耳あな型では、密閉性を高めて利得を確保することと、長時間快適に装用できることの両立が重要です。今回は測定結果だけでなく、実際の使用感も踏まえて形状を見直しました。
ご自宅から当店までは片道約2時間。実質2回の対応で日常使用に至りました。
予備の補聴器もお持ちですが、今回のOwn SI 2 CICの聞こえには満足されており、現在はこの補聴器を最も長く使用されています。
2.症例② Opn 2 IICからOwn SI 2 IICへ|調整の正確さが満足度を左右する
自分で音量を変えられないIICだからこそ
耳の奥に収まる超小型のIICは、目立ちにくい反面、今回の機種では装用者自身で音量や音質を切り替えることができません。
※イラストはあくまでイメージです。実際の挿入位置は、耳の形状や機種によって異なります。
聞こえに不満があっても、その場で音量を上げたり、プログラムを切り替えたりして補うことが難しい形状です。
だからこそ、必要な音を最初からどこまで正確に届けられるか。フィッティングの精度が、そのまま満足度に直結します。
こちらは、Opn 2 IICを使用されていた60代の方。当店の「再生コース」にご相談いただいたことが始まりでした。
「同じ機械でこれだけ変わるなら」
再調整では、特に高音域の小さな音への利得に注目。実耳測定(REM)で耳の中に届いている音を確認し、処方式の目標値に近づけるよう調整。
その結果、補聴器を買い替えることなく、従来のOpn 2 IICで聞こえに大きな変化が生まれました。
そして再生コース2回目の来店時、ご本人から買い替えのご希望をいただきました。
実耳測定を用いた調整とメーカー初期設定を比較した海外のシステマティックレビューでも、語音明瞭度や使用者の選好などで実耳測定による調整が良好な結果を示しています[5]。
新しい製品を提案する前に、今お使いの補聴器が持つ性能をどこまで引き出せるか。今回の買い替えは、そこから始まりました。
実耳測定は、設定画面の数値だけでなく、実際に耳の中へ届く音を確認するための測定です。詳しくは実耳測定(REM)とNAL-NL3についての解説をご覧ください。
最上位ではなくOwn SI 2を選んだ理由
買い替え後も、ご希望は同じIICでした。
最上位のOwn SI 1も検討しましたが、IICはシングルマイク構成で、複数マイクによる指向性処理を利用できません。
ご本人は60代で、新しい音への順応も早い方。従来機の再調整ですでに聞こえが改善していたことも踏まえ、生活環境と上位グレードの追加機能を見極めたうえで、Own SI 2 IICを選択しました。
Own SIには、ディープニューラルネットワーク(DNN:深層ニューラルネットワーク)を用いたAI音声処理技術「DNN 2.0(ディーエヌエヌ 2.0)」が採用されています[6]。
新しい音声処理技術を活用しながら、実耳測定で小さな音から会話音まで確認し、日常生活に合う状態に仕上げることを重視しました。
「何も言うことない」
新しいOwn SI 2 IICも実耳測定を用いて調整。納品を含む2回の対応で安定し、ご本人からは次の言葉をいただきました。
3.2つの症例を比較|同じシリーズでも、調整の課題は異なる
| 比較項目 | 症例① | 症例② |
|---|---|---|
| 旧機種 | Opn 2 CIC | Opn 2 IIC |
| 新機種 | Own SI 2 CIC | Own SI 2 IIC |
| 重視した点 | 必要な出力・装用感・ハウリング対策 | 小さな声の聞き取り・調整精度 |
| 選定理由 | 将来の耳掛け型との使い分けを考慮 | IICの機能的制約と生活環境を考慮 |
| 主な対応 | 90スピーカー、2プログラム、3D耳型、シェル再製作 | 高音域の小入力を重視したREM調整 |
| 調整・対応回数 | 実質2回 | 納品を含め2回 |
| 使用結果 | 聞こえに満足され、予備機よりも長く使用 | 調整が安定し、ご本人も満足 |
オーティコンの耳あな型・耳掛け型を比較したい方へ
今回の2症例は、同じOwn SI 2への買い替えでも、必要な出力、耳型の設計、実耳測定による調整の進め方がそれぞれ違うものでした。
補聴器選びは、耳あな型か耳掛け型かという形の違いだけで決めるものではありません。装着感や聞こえの特徴まで比べてみることが大切です。
当店では、Own SI(オウン エスアイ)・Intent(インテント)・Verit(ベリット)・Zeal(ジール)の特徴と価格、現場での評価を1ページにまとめています。
オーティコン補聴器の機種比較・評判・価格はこちら4.まとめ|買い替える前に、今の補聴器を見直す
症例①では、CICで必要な利得を確保するための音響設計と装用感の両立が課題でした。一方、症例②では、装用者自身で音量や音質を切り替えられないIICだからこそ、実耳測定による調整の正確さが重要でした。
特に印象的だったのは、症例②で新しい補聴器を購入する前に、従来のOpn 2 IICの再調整だけで聞こえが大きく変わったことです。
補聴器の買い替えを考えたとき、最新機種の性能や価格に目が向きがちです。しかし、現在の補聴器が適切に調整されているかを確かめることで、買い替えの必要性や新しい機種に求めるものが、より明確になることがあります。
今の補聴器で改善できることは何か。
新しい補聴器に替えることで、何が変わるのか。
その違いを確かめたうえで選ぶことが、納得できる買い替えにつながると考えています。
補聴器選びで起こりやすい失敗については、補聴器選びで失敗しないためにでも解説しています。
ご相談について
The補聴器専門店 中村では、複数メーカーの比較試聴、実耳測定(REM)、装用効果の確認を通じて、補聴器の選定と調整を行っています。
大阪市天王寺区・谷町九丁目の認定補聴器専門店です。
- 完全予約制
- 初回相談:5,000円
- 所要時間:60〜90分
補聴器の価格については、補聴器の価格案内もご覧ください。
参考資料
- Oticon|Opn CIC Technical DataOpn CICのスピーカー仕様、出力、利得に関する技術資料。
https://www.oticon.com/-/media/oticon-us/main/download-center/opn/td/188804us_td_opn1-2-3_cic_85.pdf?sc_lang=en - オーティコン|Own SI CIC 製品情報・技術資料Own SI CICの仕様、操作機能、対応するスピーカーに関するメーカー情報。
https://www.oticon.co.jp/products/721429/オーティコン-オウン-si-cic - Erickson & Van Tasell(1991)|Maximum real-ear gain of in-the-ear hearing aids耳あな型補聴器の実耳利得と音響条件に関する研究。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2046359/ - Acoustic Feedback and Other Audible Artifacts in Hearing Aids音響フィードバックと使用可能な利得に関する研究。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4172233/ - Does Probe-Tube Verification of Real-Ear Hearing Aid Amplification Characteristics Improve Outcomes in Adults?(2021)実耳測定による調整とメーカー初期設定を比較したシステマティックレビュー。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8083001/ - Oticon|Own SI for ProfessionalsOwn SIのDNN 2.0と小型耳あな型の音声処理技術に関する海外メーカー資料。
https://www.oticon.com/en-us/professionals/campaigns-b2b/own-si
※症例の機種選定、測定結果、調整内容、シェル再製作、使用者の反応は、The補聴器専門店 中村の実際の対応記録に基づきます。




